獄寺くんの長い長い入院
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「なんとなく予測は付くよ京子ちゃん。きっと野球部のエースか風紀委員の偉い人だよ!」
予測と言うかそれはかなりの決め付けであったがとりわけ否定する人はいなかった。
「…一体どっちから天罰を下そ…洗って行こうか。やっぱり野球部?あの野郎常にオレの獄寺くんの後ろ斜めにいやがって…!」
予測は最早決め付けとなり。しかも私怨すら交じっていた。
ぶつぶつと色々人が人として聞いちゃいけないようなことを呟くツナ少年。
うっかり聞いてしまった周りのクラスメイトが怯える中、そんな教室に訪れた一つの影。
「ボンゴレ坊主ー、いるかー?」
「ああ、しまったそっちのパターンだったか…!このロリコン!獄寺くんを拉致監禁するな!!」
「色々人聞きの悪いこというなよな」
なにやら暴走してしまったツナにも怯まず。やってきたのは白衣を着た一人の保健医。
その名をDr.シャマルといい、裏では暗殺者であり医者という矛盾した役職に就いている女好きの隼人好き。そして指名手配犯である。
「お前あれだろ!?獄寺くんに薬盛って色んなことを無理矢理強制させるつもりなんだろ!?この変態!薬に頼らず自分でさせるのが良いんじゃないか!!」
なにやら犯罪者一歩手前なことを狂言しているツナ少年。
周りのクラスメイトが引いている気がするがきっとまぁ気のせいだ。うん。
「だからお前人聞きの悪いこというなって!…ったく隼人の奴。こんな奴のどこが良いんだか」
「それよりもシャマル先生。ツナくんに何か御用ですか?」
これまでの問題発言の数々を"それ"だけで片付ける笹川京子。
やはり計算なのか。腹黒なのだろうか。
「ん…ああ、そうだった。ボンゴレ坊主に隼人から伝言があってな」
「やっぱり獄寺くんを…!地下か!鎖か!手錠なのか!!」
「お前いい加減落ち着けよ」
ぺしっと軽くはたかれてツナはようやく少し落ち着きを取り戻す。
「む…だってシャマル。オレ…獄寺くんが心配でさ」
「分かった分かった。でもそう心配するな。…隼人はな…」
同時刻。並盛病院の503号室にて。
そこには独りの少年がベッドに横たわっていた。
空けるような白い肌。銀の髪が少し開かれた窓から入ってくる微風に揺られてる。
閉じられた瞳は開けられる事無く。そして彼の細い腕には、白い肌よりも更に白い包帯が巻かれていた。
彼こそ先程から話の中心となっている獄寺隼人。天然の総受けっ子で日々大変な目にあっている。
その個室に音はない。何もない。車も通っていないのか人も歩いていないのか窓の外からも何も聞こえない。
まるでこの空間だけ、死んでいるようだった。
…そこに。
(ん…?)
遠くから音が生まれる。生が動き出す。
それはこちらに向かって走って来る音。そして注意を受けてる音。
その音に。獄寺少年が静かに意識を覚醒させて。音のする方へと目を向けると…
本日Dr.シャマルによって"ちょっとドジ踏んでしまって暫く会えませんが気にせず勉学に励んで下さい"と伝言を伝えたはずの10代目が少し暴走気味に病室に突入してきた。
獄寺は少々オーバーリアクション気味に頭を抱えた。
しかしオーバーなのは表現だけでその心理は全然オーバーではなかった。
10代目。なんで貴方こんな所にいるんですか?
言葉には出さなかったが獄寺少年は間違いなくそう突っ込んでいた。
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