獄寺くんの長い長い入院
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「獄寺くんいたー!やっと会えたー!!」
ツナは朝からずっと探し回っていた獄寺なる人物を見つけると一目散に走ってきて。そして獄寺に熱い熱い抱擁を交わす。
「…10代目。どうしてこんな所に?授業はどうしたんですか?」
抱きつくツナにも獄寺隼人は取り分け気にせず。静かに問い掛ける。
「獄寺くんがいない空間になんの意味もないからサボってきたよ!ああ獄寺くん会いたかったー!!」
「…10代目。オレ確か伝言をシャマルに預けたような気が…」
「伝言は貰ったけど気にしないことなんて出来ないから無理矢理居場所聞いて来たんだよ!」
ツナ少年は獄寺少年の意思だけでなく、気遣いとかも完全無視だった。
「あは…ありがとうございます。でもこんな醜態…10代目に見られるなんて…」
獄寺隼人は怪我した右腕を庇うように、あるいは隠すように左手で覆う。
「気にしないで。…それで怪我は…酷いの?」
「いえ、大したことはないのですけど…でも検査のために最低数日は入院だと言われてしまいました」
「そっか。それにしても腕…折れてるよね。一体どうしたの?誰にやられたの?やっぱり山本?それとも雲雀さん?」
「どうして誰にと聞いていながら加害者名が特定されているのですか?」
「別にあんな奴ら庇わなくても良いんだよ?」
「庇ってませんよ!ていうか10代目どれだけあいつらを犯人に仕立て上げたいんですか!?」
「えー…じゃあどうしていきなり入院なんてしてるのさ。獄寺くん」
「え、えっと…その、それは…」
「それは?」
「あ、…朝、階段を降りてたら…雨で滑りやすくなってて…その、転んで……」
「それで、怪我?」
「は、はい…」
「………」
「………」
暫し。辺りを沈黙が支配して。
「なんだぁー…」
ふっと脱力してしまったかのように。ツナは獄寺にもたれかかった。
「10代目?」
「もー、驚かせないでよ。急に連絡取れなくなって、しかも入院してるなんて…オレがどれだけ心配したか分かってる?」
「あ…ごめんなさい、10代目…」
しょぼんと顔を俯かせる獄寺に、ツナは苦笑して頭を撫でる。
「んー、謝らないでもいいよ獄寺くん。でも今度からはちゃんと連絡してきてよね」
「はい、…すいません、でした」
「うん…そっか、階段を滑らせてねー…そこから救急車呼んだの?」
「いえ、どうしようかと考えてたら見計ったかのようなタイミングでシャマルが颯爽と現れて、オレをお姫様抱っこしてここまで連れてきてくれたんです」
「ああ、そうだったんだ。やだなぁ獄寺くん。そういう大事なことはもっと早めに言わないと」
「すいません、10代目。経費は奴持ちだったので」
「うん。それはそれで当然だけど…じゃあ、オレはもう行こうかな」
「あ、行かれますか10代目」
「オレがいなくて淋しい?でも大丈夫。直ぐにまた戻ってくるからね。ちょっとシャマルを締めてくるだけだから」
「そうですか…行ってらっしゃいませ。10代目」
こうなってしまってはツナはもう止められなく。獄寺に出来るのはただ送り出すことだけだった。
その日の夕方。中年の男性と中学生ぐらいの男の子が死ぬ気な勢いで街中を暴徒しながら爆走するニュースが流れたのだが…それはまた。別のお話。
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おー、やってるやってる。
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