思わぬ収穫
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「………もしかして獄寺くん。雷苦手?」


そのオレの言葉に、初めて獄寺くんはオレに抱きついた事に気付いたようで。慌てて身を離す。


「す、すみません10代目!オレなんて事を!!」


雨に濡れた地面に土下座しそうな勢いの獄寺くんをオレは慌てて止める。


「あー!いいからいいから!!オレ気にしてないから!!」


むしろ嬉しかったから!


「…ほら、獄寺くん。オレんち行こう?身体冷たいよ。温まらないと」

「で、ですが…」


それでもとごねる獄寺くん。…駄目だよ。あんな反応見せられて、オレが放っておけると思ってる?

そう言おうと思ったら、またも光る閃光…と同時に落ちてくる雷。辺りの電気が消えた。地面が揺れる。


「…また、でっかいのが落ちたねー…びっくりした」


オレは獄寺くんに視線を向ける。獄寺くんはへたり込んでいた。


「………大丈夫?」

「…そう見えますか」


全然。獄寺くん涙目だし。


「―――ほら、獄寺くん。オレと一緒に行こう?獄寺くん一人で雷に耐えられる?」


オレがそう言うと、獄寺くんは迷って迷って迷って―――そして小さな声で一言、お邪魔しますと言ってくれた。


「うん、お邪魔して?オレずっと獄寺くんに逢ってなくて、禁断症状が出てきちゃったんだから」


未だコンクリートに座り込んでる獄寺くんを立たせてまたも抱きつく。


「…今日はいい日かも」


もうオレにはさっきまでの最悪な気分はなかった。


「…オレにとっては複雑な日です」


そんな彼の声も気にならない。ああ、今日はなんていい日なんだ。

彼に逢えただけでなく、彼の可愛い弱点まで知ってしまった。

こんな、言ってしまえば光って音が鳴るだけの現象に。彼がこんなにも驚くなんて。なんて新鮮で、なんて可愛い。


「獄寺くん。今度から雷が鳴ったら、オレの所に来なよね」

「そんな恐れ多いこと出来ません」

「ふーん?そう。いいよそれでも。だったらオレが獄寺くんの所まで行くから」

「それもっと恐れ多いじゃないですか!駄目ですよ!!」


そんな事を言われても、獄寺くんのこんな一面を見てしまったら放っておけというのが無理というもの。

―――まぁいいや。どんなことを言われても、オレは彼に負ける気はしないし。

とりあえずは―――


「獄寺くん」

「―――はい?」

「おかえり」


獄寺くんは一瞬照れたように赤くなって―――


「はい、ただいまです…10代目」


そう、オレに応えてくれた。


++++++++++

うん。お帰り、獄寺くん。