鬼ごっこ
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時間を見れば、残り時間は数十分を切っていた。

……よし、このまま逃げ切ってやる。

と、オレが決意を改めた時。…オレの前に、一人の男が立ちはだかった。


「…待ってたよ。獄寺くん」

「っ……10代目」


ああ、そうだそうだった。まだこの人が残っていた。


「―――やはり。貴方から逃れられる事は出来ませんでしたか…」

「うん。オレの事をわかってくれて、嬉しいよ」

「えぇ、他の誰でもない…貴方の事ですから」


嬉しいことを言ってくれる、と10代目は笑う。


「そこまでオレのことが分かってくれてるんだから、大人しくオレに捕まってくれないかなぁ?」

「ダメですよ10代目。これはリボーンさんの訓練なんですから。ずるをすると後が怖いですよ」


――とまぁ、これはあくまで建前で。


貴方と二人っきりだと正直猛禽類に狙われた鼠のような気分になるからなんですけど。

いやいや、冗談ではなく。本当に怖いんですって。

「じゃあ仕方ない。正攻法で獄寺くんゲットしちゃお」


10代目は懐から鏡を取り出して。オレに向ける。夕日に反射した光がオレの眼に当たり、一瞬だけオレに隙が出来る!


―――って、滅茶苦茶卑怯じゃないっすか!!


このまま突っ立っていても、10代目に捕まるだけだ。

オレは未だ眼の自由が利かない身体で後ろを向き、走る。


「遅いよ、獄寺くんっ」

「―――くっ」


一瞬で確認した曲がり角に慌てて向かって。ぎりぎりで10代目の手を避ける。


「あっ、惜しい…でも、もう逃げ道はないよ!!」


確かにその通り。ここからは暫く一直線のはずだから、さっきみたいな逃げはもう出来ない。

どうする、どうするオレ…っ

10代目に攻撃なんて出来ないし、かといって捕まりたくはないし…っ


―――って、そうだ。


「く…っ10代目、失礼します!!」


ぷしゅーっと、白い煙が辺りを覆う。


「っ!?煙幕っ!?」


正解です。すみません10代目。


でも、二人っきりの時の貴方の人の変わりようがいけないんですよ。


視覚の面ではこれで互角。10代目から逃れようとした、その時!


パシッ


―――腕を、捕まれた。

………誰?10代目?…捕まった?


「六時だ。タイムオーバーだぞ」


いいや。この聞き覚えのある声は―――



「全く情けねぇな…あんだけ時間やって、結局捕まえられねぇとは…」

「む…いや何言ってるの、あそこで獄寺くんが煙幕使わなかったらオレが…」

「言い訳はいらん。世の中結果が全てだぞ」

「く…っ」

「まぁまぁリボーンさん。その辺りで…」

「ん…?まぁ、獄寺がそこまで言うんだったら、大目に見てやるか」


そう言って、リボーンさんはころりと寝っ転がる。

…オレの、膝の上で。


「くぁー、獄寺くんの膝枕なんて羨ましー!リボーン!お前ちょっとそこどけよ!!」

「何馬鹿なこと言ってんだ?これは勝者に与えられた、正当な権利の上での行動だぞ?」


オレの人権を無視した上での権利ですけどね。


「…ん?何か言ったか?獄寺」

「……。何でもありません」

「そうか。じゃ、オレ風呂に入るから獄寺。お前背中流せ


うわ、今後ろにいるはずの10代目の気配が膨大しましたよっ!?


「えと…10、代目…これはですね――その」

「うん、分かってるよ…リボーンの、勝者の命令なら仕方ないよね」


そう、そうなんです!だからその射抜かんばかりの眼光を止めてくれません!?


「そうだぞツナ。そんなに獄寺をいじめるな…ああ獄寺、今夜は添い寝を頼むな


リボーンさんはそんなに10代目を煽らないで下さい!!


おわれ。


++++++++++

「早く行くぞ、獄寺」「はい…」