お幸せに
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一方その頃。

獄寺は姉であるビアンキと共にテラスにいた。

姉のトラウマはこの10年の間でどうにか治った。流石にクッキーとのセットはお断りだが。


「―――それでね、リボーンたら超優しいのよ?超よ!?」

「はいはい」


姉の惚気話はもう聞き飽きたのだがそれでも彼女は楽しそうだから獄寺は聞いている。

姉が幸せなのは良いことだ。彼女は小さな頃から苦労していたのだからその分幸せになってもらわないと。


「貴方も早く相手を見つけなさい。愛する人を見つけたら人は幸せになれるものよ?」


失礼な、と獄寺は内心で毒付く。愛する人で言うなら広い意味で言えばファミリーはみんな愛する人だ。

もちろんその愛とビアンキの言う愛とは違うことも理解していたので曖昧な笑みで誤魔化すことにしたが。


「もう、貴方はいつだってそんなのばかり。恋愛が分からないというのなら適当に告白してしまいなさい。貴方なら大丈夫よ」

「何がどう大丈夫なんだよ」

「全部大丈夫よ。貴方なら誰にだって愛されるだろうし、振られることもないわ。…でももしも振られたら私に言いなさい?そいつ殺してあげるから」


言ってることだけならその辺の少し過保護な姉のそれと同じなのだが職業が暗殺者であることと。弟に対する愛情の深さから冗談とは思えなかった。

ていうか殺気を仕舞って下さい。辺りの温度が何度か下がってる。


「…って、オレのことはどうだって良いんだよ。リボーンさんはどうなったんだ?」

「あらあらそうだったわ。―――そう、この間リボーンとね…あら?」


ふとビアンキが獄寺のその後ろを見るものだから獄寺も何事かと首をその方へと向かせる。

リボーンがいつものように歩いてきて、そしてその後ろをツナが何故か慌てたように追いかけていた。



「あ、リボーンさんお疲れ様です。今丁度貴方の話をしていたところなんですよ。…あと10代目?どうかなさったんですか?お疲れのご様子ですが…」

「い、いやなんでもない…というか獄寺くん!」

「はい?」

「そ、その…ね。あの―――」


向き合うとまごまごし始めるツナ。最近二人っきりになるといつもこれで獄寺は困惑していた。いや、今は二人っきりというわけではないが。


「や、だから…えと……っ」


まごまごまごまご。正直うざったい。と、


「―――ビアンキ!!」


ツナはいきなり矛先を姉のビアンキへと変えた。いきなりのことに付いていけない獄寺と。怪訝顔なビアンキと。


「お、弟さんをオレに下さい!!!」


なんとツナ、本人の目の前で色々間違ったプロポーズ。というかこれはプロポーズなのか。

ビアンキはツナの言葉に数秒目を閉じて――…そしてかっと目を開いて。


「笑止!あんたみたいなヘタレにわたしの隼人は任せられないわ!!」

「んな―――!オレのどこがヘタレだって言うのさ!!」

「本人の目の前で告白しそうになったが寸前で姉に許しを乞いた所とか特に」


リボーンの最もなお言葉にガーンとツナはショックを受ける。


「う…わあぁあああああんっちくしょーどうせオレはダメツナだよチキンだよマグロだよー!!!

「じ、10代目ー!最後の魚の意味が良く分かりませんが10代目ー!!!」


泣きながら去っていったツナを追いかけようとする獄寺だがリボーンに遮られる。


「放っておけ。今のあいつはきっと独りになりたい気分だろうさ」

「そう…なんですか?」


疑問顔だがリボーンが言うのであればそれに間違いはないだろう。獄寺は椅子に戻る。


「そういえばオレの話をしていたんだって?」

「そうよ。この間のデートの話よ」


幸せそうに微笑みながら言うビアンキに獄寺も苦笑交じりに、けれど幸せそうに微笑む。


「ええ。姉貴の惚気がもう鬱陶しくて困ってるんです」

「そうか。それは悪かったな獄寺」


ちっとも自分に非がないような謝りかたであったが、獄寺は気にせず―――


「いえ、良いんです。もし宜しければこれからも相手をしてあげて下さい」