押してダメでも押してみろ
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次の機会が訪れたのは、翌日。

購買まで昼食を買いに行こうと、角を曲がったすぐ傍にリボーンが歩いていた。

近い距離。リボーンは後ろを向いて、獄寺に気付いていない。

チャンス到来。

獄寺は前足に力を込め、走り出す。


「リボーンさん!!」

「!!」


獄寺の叫んだ声に、リボーンの身体がびくりと震える。

そして後ろを振り向くこともないままリボーンも走り出した。逃げ出した。


「待ってくださいリボーンさん!!」

「待てるか!!」


突如として始まった鬼ごっこ。

周りの生徒が驚きながら見ているが、二人はそれどころではない。

スタートダッシュで出遅れたとはいえ、猫のような俊敏さで逃げるリボーン。

それを長い腕を伸ばし、必死に捕まえようとする獄寺。

いかん。このままでは捕まる。リボーンは焦る。

と、リボーンの目の端がある人物を捉えた。リボーンは最後の力を振り絞りその人物の方へと向かう。


「―――ツナ!!」

「え?」


リボーンはまるで銃弾のようにツナに飛び込み、その胸に収まる。


「べ、弁当……忘れてたぞ」

「あ、ああ、うん、ありがと…」

「リボーンさん!!」

「!!」


ツナの腕の中のリボーンがまたびくりと震える。固まる。獄寺の動きも止まる。


「10代目!リボーンさんをこちらへ!!」

「ツナ!オレを連れて逃げろ!!」

「え?…ええ!?」


状況が全く呑み込めないツナ。


「お…落ち着いて二人共。まずはオレに状況の説明を……」

「10代目!いいですからリボーンさんをこちらへ!!」

「ツナ!いいからオレを連れて逃げろ!!」

「聞けよ人の話を!!」


ツナは怒鳴った。

ツナはまずリボーンを引き剥がそうとするが、リボーンはまるで母親から離れたくない赤子のようにツナの服を握って離さない。


「く…!!10代目、羨ましいです」

「オレにとっては鬱陶しいだけだけどね」


獄寺は今にも飛び掛からんとしているが、流石に敬愛する10代目の手前自制しているらしい。


「獄寺くん、リボーンに話があるの?」

「そうです!!」

「リボーン、聞いてあげれば?」

「断る!!」


綺麗な平行線だった。


「…獄寺くん。なんか凄い熱気を感じるけど……どうしたの?」

「オレ……気付いたんです。…自分の、気持ちに」


ツナの腕の中のリボーンがびくびく震える。


「気持ち…?」

「ええ。オレは、リボーンさんが好きです!!」


大きな声で獄寺は言った。

まるでお兄さんが取り付いたみたいだ。とツナは思った。極限とか言い出さなければいいが。


「リボーンさん!!オレと付き合ってください!!」

「………。リボーン、答えたげれば?」

「………」


リボーンはツナを見上げる。

その目は潤んでおり、その身体はかたかたと震えていた。


「………獄寺くん。リボーン、なんか、嫌がってるっぽい」

「!!」

「そうなんですか!?オレのどこが不満ですかリボーンさん!直しますから言ってください!!」

「………、」

「…多分、落ち着きのなさ。だと思う」


リボーンではなくツナが答えた。


「…分かりました。落ち着きます。落ち着きますからリボーンさん、オレと…」

「ご、獄寺くん、あんまりしつこいと…嫌われる、かも……」

「!!!」

「………それは困りますね。分かりました。では…今日のところはこれで。失礼します」