ぽたり
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あー…しまった。

思わずため息を吐く。


リボーンさんに本を貸す約束をしていたのをすっかり忘れていた。

帰って渡すことも出来ないし。なんということだ。

あー…と伸びた声を出す。オレはどこかで抜けてるんだよな。


それに山本。あいつにライターを貸しっぱなしだった。何たることだ。あれ気に入ってたのに。

あいつ煙草も吸わないくせに何に使うつもりだったんだ…?


それからまだある。10代目に頼まれていた仕事がまだ終わってない。やばい。

山積みになってるんだろうなぁ…あれオレがいなかったら誰が処理するんだろ。


そういえばハルからなんか菓子をもらっていたな。笹川とクロームとで一緒に作ったとか何とか。

あとで食おうかと思っていたが結局食ってなかったな…まぁいいか。


シャマルには呼び出されていたし。雲雀には借りを返せてないし。芝生とは決着が付いてないままだし。


ああ、遣り残したことばかりだ。


帰ったら。帰れたら。片端から用事を片付けるのだが…

ぽたり。と、オレの腹から液体が漏れる。

座り込んだ床には血溜まりが広がっている。

頭のどこか切ったのか、血が額を伝い目に入る。片目が使えなくなる。

はぁ、と大きく息を吐く。血液が口から漏れる。ケホ、と咽せた。


血が止まらない。

身体が冷える。

頭がぼんやりして、意識が纏まらない。


…眠い。


冷たくて硬い壁に背を預けたまま、そう思う。

寝たらきっと、それまでだろう。

分かっているのに、不思議と寝たくないとは思わなかった。ゆっくりと意識が沈んでいくのが分かる。

本、ライター、仕事、菓子、呼び出し、借り、喧嘩。

意識が薄くなっていく中、オレの頭を埋め尽くすのはそれだけになった。


++++++++++

さよなら、未練ばかりの人生。