亡き右腕
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まるで申し合わせたかのように、二人はそこに立っていた。
一人は漆黒のスーツに身を包んだ小柄の男。…年齢的には少年と呼ぶべきなのだろうがどうもその呼び名は違和感がある。それほどの威圧感。
もう一人もまた黒のスーツを着こなした長身の男。銀髪の彼は驚いたように男を見ていた。
「随分と手間取らせやがって。お前隠れるのと逃げるの巧過ぎだ」
やれやれ、とため息を吐きながら。けれどその視線はもう逃がさないとでも言うようにしっかりと碧の目を睨んでいた。
睨まれている男はその刺すような視線に冷や汗を掻きながら。けれど平静を装って。
「…それは――…すいませんでしたね」
澄ました顔をしながらも、彼は古傷が痛むのを感じていた。トラウマみたいなものだろうか。ずきずきずきずきと―――
そこにないはずの、目の前にいる彼にもぎ取られたはずの。右腕が痛んだ。
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