亡き右腕
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リボーンはそれ以上の事を語ろうとはしなかった。

どれほどの時が経って、問い詰めようとも謝罪をするだけで。

その時の様子があまりにもいつものリボーンと違うものだから誰も何もそれ以上言えず。

今回の事件の後始末も大部分はリボーンがやった。

おかげでそれほどの騒ぎにならなくて済んだが…それでもしこりは残って。


そうこうしているうちに早くも数年の月日が流れて。

その間にリボーンは任務の片手間に何かを調べていた。

そんな最中。何かが分かったのかリボーンはどこかへと発って。


そして――…


まるで申し合わせたかのように、二人はそこに立っていた。

一人は漆黒のスーツに身を包んだ小柄の男。…年齢的には少年と呼ぶべきなのだろうがどうもその呼び名は違和感がある。それほどの威圧感。

もう一人もまた黒のスーツを着こなした長身の男。銀髪の彼は驚いたように男を見ていた。


「随分と手間取らせやがって。お前隠れるのと逃げるの巧過ぎだ」


やれやれ、とため息を吐きながら。けれどその視線はもう逃がさないとでも言うようにしっかりと碧の目を睨んでいた。

睨まれている男はその刺すような視線に冷や汗を掻きながら。けれど平静を装って。


「…それは――…すいませんでしたね」


澄ました顔をしながらも、彼は古傷が痛むのを感じていた。トラウマみたいなものだろうか。ずきずきずきずきと―――

そこにないはずの、目の前にいる彼にもぎ取られたはずの。右腕が痛んだ。


「獄寺」


名前を呼ぶ。もう数年誰にも呼ばれる事のなかった本名を。


「なんでしょう。リボーンさん」


名前を呼ぶ。もう数年誰かの名を言うなんてしなかった口で。


「帰るぞ」


あっさりとそう言うものだから獄寺は驚いて。…けれどすぐにまた表情を戻して。


「出来ません」


お返しとばかりにあっさりとそう言い返す。それに応じるリボーンでもないが。


「うるさい。お前に拒否権なんてねぇ。散々このオレを振り回しやがって。帰ったら仕置きだ」

「怖いですね。でもオレは貴方に振り回された経験はあっても、貴方を振り回したことはないと思うんですけど」

「認識がないってのは困ったものだな。そこら辺もあとでたっぷりと言い聞かせてやる。だから」

「―――戻れません」


きっぱりとリボーンの言葉を遮って。獄寺は真っ直ぐにリボーンを見て言い放つ。


「あれから何年経ったと思います?オレ、全然訓練とかしてなくて…ブランクがとんでもないです。戻っても役立たずです」

「関係ねぇ」

「それに右腕もありませんし…とても戦力にはなれませんよ?」

「………」


リボーンは帽子を深く被る。獄寺は慌てて


「あ、いえ…貴方のせいにするってわけではないのですけど…」

「そうか」


獄寺は苦笑いをして。


「それに―――言ったじゃないですか」


その目は遠くを見ていて。


「あのときに」


今このときではない、あのときを見ていて。