亡き右腕
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獄寺が目を覚ました時、そこには獄寺だけだった。

身を、ゆっくりと起こす。

試しに右腕を持ち上げてみる。…寝る前はまるで麻痺したかのように動かなかったそれは痛みを発しながらも動いてくれた。

腰に手をやる。…使っていた拳銃がそこに変らず収まっていた。

銃弾を確認すると一発だけ残っていて。

無用心だな、と獄寺は笑った。

そしてそれを、そのまま頭に宛がえて―――


「何してるんだ?」

「…惜しいです。あと三秒でも遅ければ…死ねましたのに」

「何で死ぬ?理由がねぇだろ」

「あいつらを殺しました」

「それがどうした」


「仲間でした」

「裏切り者だ」


お互いに一歩も引かない。引くわけにもいかない。


「あいつらは…仲間でした。でも、オレは殺しました」

「まだ気に病んでいたのか」

「これは…つまり、オレは裏切り者なら雲雀でもランボでも…貴方でも撃てる、と言うことなんですよ?」

「結構なことじゃねぇか」


簡単に言ってのけるリボーンに獄寺は弱々しい笑みを返すだけだ。そう割り切れたらいいんですけどね。


「でも、オレはそれは嫌だと思いました。思ってしまいました」


例え裏切り者でも。あいつらを、貴方を殺すのだけは、それだけは……


「けれどそれは立派な裏切りです。さぁリボーンさん。裏切り者には?」

「死を、だ。しかし待て獄寺。そういった判断はツナに任せるのが定石だ」

「それは駄目です。あの人は、お優しいですから―――」


にっこり笑った獄寺にリボーンは銃を抜く。その判断は一瞬。


響く銃声。その音は一つ。血液が飛び散って―――――

獄寺の右腕が、すぐ後ろの壁に銃弾の衝撃で千切れて、叩きつけられた。


「………っ」


珍しく…リボーンの表情が変わる。まるで過ちを犯してしまったかのような。

獄寺はなくなってしまった腕を押さえながら。


「なに…しま、すか……」

「―――お前こそ何しようとしてるんだ?ツナが言ってたことをもう忘れたのか」


…それは、昔の話。

まだツナが正式な10代目になったばかりのとき。

彼は言った。

裏切りは許さないと。

そして自殺はもっと許さないと。

自殺こそを最大の裏切り行為だとして見ると。


「…そういえば…そんなこともありましたね。すっかり忘れてました…」

「そうだ。それほどお前には今余裕がないんだ。さっさと帰るぞ」


「嫌です」


即答する獄寺。獄寺は千切れて離れた右腕が握っている銃を左手で掴んで。それから右腕を振り払うようにリボーンに投げつけた。

リボーンは、一瞬。

ほんの一瞬だけ怯んで。ほんの一瞬だけその右腕に…先程、自分が撃ち抜いた獄寺の右腕に意識を持っていかれて。


そしてその間に獄寺はその場から離脱した。

リボーンは投げられた腕を払うことはせずに掴んで受け止めて。

生まれて初めて、大きな大きなため息を吐いた。