亡き右腕
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事の始まりは数年前。
沢田綱吉が紆余曲折の末にボンゴレ10代目となって。それから数年が経過したある日だった。
「は―――?今なんて言ったの?雲雀」
『何度も言わせないで。聞こえてたんでしょ?―――隼人が味方メンバーを殺した。…裏切ったんだよ』
いきなりの抗争に出ている雲雀からの電話。報告には早過ぎると不審に思いながら取ってみればまさかの言葉。
「…雲雀。一体何の冗談?エイプリルフールはもうとっくに過ぎたと思うけど」
『僕だって冗談だと思いたいさ。でも彼は殺した。抗争に混じって仲間を撃ち殺した。誰だと思う?』
雲雀が告げた名は、ボンゴレファミリーの中でも古株で。以前獄寺から聞いた話によるとその獄寺をファミリーに入った時から可愛がってくれたという人物だった。
「うそ…でしょ…?―――そうだ、獄寺くんは!?話がしたい!」
『残念だけど逃げた。僕らが仲間殺しに唖然としている間にね。今彼を追うかそれとも帰るかで揉めてる…追って話をするか、殺すかどうかもね』
「な…!」
ツナは耳を疑う。殺す?誰を…?
『ま、裏切り者には死をってここに来る前から散々言われてたしね。…奇しくも彼に』
「…っ」
ああそうだ。彼はよく言っていた。裏切り者の罪深さを。裏切り者末路を。
『それで?僕たちはどう動けばいいのかな?ボンゴレ10代目?』
ずるい質問をぶつけてくる。無論彼を追ってほしい。しかも出来る限り無傷で。けれど彼らは任務で疲労しているし、それに…
「…分かった。雲雀、全員引き連れて戻って来い。みんなに文句は言わせるな」
ツナは戻らせることを選んだ。恐らく探させても彼は見つかるまい。
『へえ。ちょっと意外かな。なに、キミお得意の勘ってやつ?』
「そうだ。だから戻って来い」
『はいはい』
ツー、ツー。電話が切れる。ツナは受話器を戻す。
深く、息を吐く。…駄目だ気を抜いては。
ふとここにはいないリボーンのよく言っていた言葉を思い出す。――曰く。如何なるどんな状況でも思い浮かばせておくこと。
けれどこれは流石に思い浮かばなかった。無理だ。ありえない。
―――しかし、起きてしまったのだ。
何か理由があるのか知らないが、一波乱ありそうだった。
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