亡き右腕
2ページ/全18ページ


事の始まりは数年前。

沢田綱吉が紆余曲折の末にボンゴレ10代目となって。それから数年が経過したある日だった。


「は―――?今なんて言ったの?雲雀」

『何度も言わせないで。聞こえてたんでしょ?―――隼人が味方メンバーを殺した。…裏切ったんだよ』


いきなりの抗争に出ている雲雀からの電話。報告には早過ぎると不審に思いながら取ってみればまさかの言葉。


「…雲雀。一体何の冗談?エイプリルフールはもうとっくに過ぎたと思うけど」

『僕だって冗談だと思いたいさ。でも彼は殺した。抗争に混じって仲間を撃ち殺した。誰だと思う?』


雲雀が告げた名は、ボンゴレファミリーの中でも古株で。以前獄寺から聞いた話によるとその獄寺をファミリーに入った時から可愛がってくれたという人物だった。


「うそ…でしょ…?―――そうだ、獄寺くんは!?話がしたい!」

『残念だけど逃げた。僕らが仲間殺しに唖然としている間にね。今彼を追うかそれとも帰るかで揉めてる…追って話をするか、殺すかどうかもね』

「な…!」


ツナは耳を疑う。殺す?誰を…?


『ま、裏切り者には死をってここに来る前から散々言われてたしね。…奇しくも彼に』

「…っ」


ああそうだ。彼はよく言っていた。裏切り者の罪深さを。裏切り者末路を。


『それで?僕たちはどう動けばいいのかな?ボンゴレ10代目?』


ずるい質問をぶつけてくる。無論彼を追ってほしい。しかも出来る限り無傷で。けれど彼らは任務で疲労しているし、それに…


「…分かった。雲雀、全員引き連れて戻って来い。みんなに文句は言わせるな」


ツナは戻らせることを選んだ。恐らく探させても彼は見つかるまい。


『へえ。ちょっと意外かな。なに、キミお得意の勘ってやつ?』

「そうだ。だから戻って来い」

『はいはい』


ツー、ツー。電話が切れる。ツナは受話器を戻す。


深く、息を吐く。…駄目だ気を抜いては。

ふとここにはいないリボーンのよく言っていた言葉を思い出す。――曰く。如何なるどんな状況でも思い浮かばせておくこと。

けれどこれは流石に思い浮かばなかった。無理だ。ありえない。


―――しかし、起きてしまったのだ。


何か理由があるのか知らないが、一波乱ありそうだった。