亡き右腕
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咽返るような血の臭い。彼は黒のスーツで分かりにくいが全身――…誰の血かは知らないが血塗れで。

…いや、彼自身も怪我をしている。片手は拳銃を握っているが、もう片方の手は脇腹へと向けられていて。そこから赤い液体がぽたりぽたりと雫を垂らしていた。

それだけじゃない。傷を押さえている手にも、白い頬にも首筋にも。獄寺のあらゆる所を朱が染めている。

それもそうだろう。彼は今まで抗争の最中にいて。そして…油断していたとは言え、古株のボンゴレメンバーを二グループもあっという間にこうして壊滅させて見せたのだ。

これで無傷で済むわけがない。

ただ、一つの…そして最大の疑問は。


どうして、こんなことを。


「…ごく、でらく―――」


必死にからからの喉からどうにか声を絞り出して。その疑問をぶつけようとすると。


「…一体何の騒ぎだ?」


その強い声に、遮られた。

遮ったのは漆黒のスーツに身を包んだ小柄の男。

リボーンだった。