亡き右腕
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「…一体いつまでそうしているつもり?」
声を掛けられる。時が流れているのを知る。
ツナが力なく振り返るとそこには仁王立ちしている雲雀と、心配そうにこちらを見ているランボ。
「まったく、それで仮にも10代目?隙だらけですぐに殺せそうだよ?」
「殺されてもいいよ…」
ツナの力なく吐き出された言葉に流石の雲雀も驚く。ランボは目を見開いている。
「ちょ…何言ってるんですか!」
「へぇ。なにを見たのさ。裏切る彼を目の当たりにでもした?」
何故か楽しそうに言う雲雀と。それを咎めるランボ。ちょっと、雲雀さん。
そんな二人を見ながらツナはぽつり、ぽつりと、先程の出来事を話す。
部屋の中で血に塗れた獄寺。
やってきたリボーン。
虚ろな目での獄寺の告発。
そして―――
二人の、逃走。
ツナの話に二人は再度驚いて。そして…何故か納得した。
「なるほど、ね…」
「これで話が繋がりましたね」
「…?」
怪訝顔で見上げてくるツナに雲雀はやれやれといった仕草で答えてくれた。
「実はね…戦場で彼が殺される直前、僕ちょっと違和感を感じたんだ」
「違和感?」
「そ。殺気をね」
殺気を感じて。そして死者が出て。
「…それは獄寺くんの?」
「それもあるだろうね。僕も戻ってくるまではそうだと思ってた」
「―――?」
「ただね、一つ納得いかない事があるんだ。…あの殺気は僕に宛てられてた」
は?とツナは雲雀を見る。それはつまり狙われていたのは雲雀だったということになる。
「それって…じゃあ彼が雲雀を庇って死んだってこと?」
「その可能性もあるね。戻ってからずっとそこのとこ考えてた」
ぐるぐるぐるぐると頭の中で考えて。そうしていたら今度はアジト内で獄寺が暴れて。
「最初は隼人が狂ったんじゃないかって思った。ここはこんな世界だし。彼は特に精神が弱いし」
狂人になって、仲間殺し。
ぞっとする話だが有り得ない話でもない。何より信じたくない話だが。
「任務中でのは数の不利で、とかまだ最後の良心が残ってたからとか。色々推測のしようもあったけどアジトでの一件でそれは消えたね」
もしも彼が。獄寺隼人が狂ってしまって。仲間殺しとなってしまったとしたら。
そうなったら殺されなくてはいけない人物がいる。けれど生き残った人物が。
「…そっか。ランボ」
ランボ自身の話だと獄寺はランボを蹴り離して。そして家具を倒したという。
確かにそれでも当たり所によっては死ぬだろう。しかし可能性は低い。現にランボはこうして生きている。
…獄寺はランボを殺すつもりはなかった。ということになる。
ならば彼は狂ってはいまい。何かしら理由と目的があって行動している。
「だから彼が殺した奴らについてちょっと調べてみた。中々に面白いことがあったよ」
雲雀は奴らの使用していたネットワークを調べて。奴らの通じてた施設を辿って。
各人のデータベースをハッキングして情報収集。もちろん犯罪だが咎める者はいない。
「そしたら…ね。いやもうびっくりした」
「何が…?もったいぶらないで早く教えてよ」
「裏切り者は殺された方だったんですよ!」
「は…?」
ランボの興奮したような一言にツナは着いていけない。
だって彼らは、獄寺に殺された彼らはツナが…いや、あの獄寺がボンゴレに入る前から既にファミリーに籍を置いていた。
途方もない年月だ。それなのにそんな彼らが裏切り者…?
彼らにツナは、いやツナだけにあらずファミリーの人間は彼らに随分と世話になっていた。それこそ雲雀もランボも獄寺も。
そんな彼らが…裏切り者?
くらり。気が遠くなる。
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