亡き右腕
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「…って雲雀。その情報に信憑性はあるの?」

「ワオ。キミが隼人よりも彼らを取るって凄いね。彼らは隼人よりも勝ったというの?」


そんなことはない。ツナは獄寺も大事だ。…けれど、


彼らは彼らで、大事なファミリーだったということも。確か。


「ま、いいけどね。信憑性はあるんじゃない?調べたデータ、全部一度消されてた形跡があったし」

「消されてたって…それを修復したってわけ?雲雀にそんな技術あったっけ?」

「残念ながらないよ。僕の前に同じようなことをしてた奴がいて。それを辿っただけだから」


それはそれでそれなりの技術が必要なのだが雲雀はなんでもないことのように答えて。


「…そう。でもよくこんな短時間でそれだけ調べられたね……」

「―――は?何言ってるの?あれから何時間が経過したと思ってるのさ」


怪訝顔で言ってくる雲雀にツナも思わず固まる。え?何時間?

つまりはそれほどショックだったということだろうか。ツナにとってはまだ数十分ぐらいしか感じていないのだが。


「…はぁ。まぁいいけど。―――で、その僕が辿ったIDの持ち主が…」

「リボーンだったんですよ」


パン、と雲雀はランボを殴る。僕の台詞取らない。


「…そういうこと。最初は隼人かと思ったんだけどね。事情を聞こうと思って探してもいないし…」

「そうこうしているうちにここに着いたんです」


ガン、と雲雀はランボを殴る。だから僕の台詞取らない。…すいません。

ともあれそれで二人はツナの話を聞いて。全ての糸を合わせて…なるほど、辻褄が合う。


「…そう。獄寺くんとリボーンが共犯だった。そして殺された彼らこそが裏切りものだった。そうだとして」


そうだったとして…そうだったとしたら。一つ疑問が残る。


「だったらなんで、獄寺くんとリボーンは逃げたのさ」

やましいことがないなら逃げる理由もなく。けれど逃げた二人。

「そこがね。僕たちも気になってたところ。でも大丈夫でしょ。彼らは裏切ってないのだからそのうち戻ってくる。そのときに話を聞けばいい」


雲雀がそう言って。一呼吸置くと。

いつものように傍若無人で。自分勝手な。けれどどこか酷く疲れているような。


「…そこまで分かってんなら話がはえーじゃねーか」


そんなリボーンの声が聞こえて。そして雲雀たちが来た扉の方から姿を現した。


「話が早いって…どうせ説明する手間を省かせるためにわざと残しておいたんでしょ?まったく…」

「まぁな」


いつものように応えるのに、いつものような覇気がない。彼らしくない。おかしい。

違和感を覚えつつも何も言えないツナ。というかもう戻ってきたのか。ついさっき逃げた気が…ああ、そうか。あれから何時間も経っているのだった。


「…リボーン。聞きたいことは色々あるけど…獄寺くんは?」


そう。まずはそこだ。そこを聞かなければならない。

そこに立っているのは彼だけだ。リボーンだけだ。獄寺の姿がない。

リボーンは片手で帽子を深く被り直して。


「―――悪い。ツナ」


誰もが耳を疑った。今なんと言った?あいつは。リボーンは。

彼が謝る。有り得ない。何故ならリボーンが間違ったことをするはずがないのだから。彼のすることはいつだって正しいのだから。

唖然とする三人にリボーンは構わず。それを放り投げた。無造作に。


それを視界に入れて。―――思考が凍る。脳が麻痺する。頭がそれを理解するのを拒否する。

だってそれをそうだと認識したら。それは必然的に連鎖的に―――認めてしまうことになる。


「オレがやった」


リボーンの言葉に誰も反応しない。誰もがそれから目を逸らせない。

リボーンが無造作に、無遠慮に放り投げたモノ。


「―――――悪い」


それは嵐のリングを装着している、獄寺隼人の右腕だった。