幸せになる方法
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約束した次の日。オレは朝一から獄寺くんのところまで走っていく。
オレが来る時、獄寺くんはいつも起きてる。いつもオレが来る方を見ていて笑っている。
「お前…早いな」
「そういう獄寺くんだって相当早いじゃない。オレ獄寺くんが寝ている所なんて見た事ないよ?」
獄寺くんは寝るのには飽きたんだと笑ったまま言って。…獄寺くんが言うと冗談に聞こえない。
「さぁさぁ!獄寺くん外に行こう!オレと一緒に!!」
オレが手を差し出すも、獄寺くんはちょっと戸惑うように。…ここまで来て今更だなぁ。
「獄寺くん!昨日約束したでしょ!?オレと一緒に外に行くの!!」
「んー…オレはツナと一緒にいられるだけで幸せなんだけどなぁ…」
上目遣いでなんだか相当に嬉しいことを言ってくれる。な、なんだか照れるな…
「え…それ本当?オレも獄寺くんといられるだけで…」
幸せだし、嬉しいし…じゃなくて。しまったまた誤魔化される所だった!
「―――はいはい獄寺くん!一緒に行くよ外行くよ!!」
「あー…ツナも流されないようになってきたなー…昔はよかった」
遠い目をする獄寺くん。遠すぎてどこ見ているのか分からないがそれほど遠い知人になった覚えはない。
「はいはい、昔を思い出すのもいいけど今は今を向こうね。過去を振り返ってちゃいけないよ!今は未来の向こう側を見ないと!」
「―――向こう側、ね…それもそうだな」
何かを諦めたかのように、獄寺くんは立ち上がって。出されてたオレの手を取って。
「それでは行きますか。外の世界へ」
なんて。ちょっとおどけて言ってみせた。
外に出ると眩しい光が差し込んでくる。気付けば日差しが強くなっていて。
「ところでツナ。お前折角の休日なのにオレなんかと遊んでていいのか?」
「…またその話?いい加減しつこいよ獄寺くん」
そう言うと「しつこさならお前の方が上だ」と笑われる。…まぁ、確かに。
「オレはいいの。友達なんていないし」
「でもな…この村に他に子供がいないってわけでもないんだろ?」
「ん…。まね。多くはないけど、いることはいるよ」
でも、とオレは言葉を続ける。
「でもね。…オレあいつら嫌いなんだ。…それにあいつらだってオレのことなんて嫌いだよ」
「そうなのか?」
「そ。何も出来ないオレをいっつもダメツナって呼んで…あいつらなんか嫌いだよ」
「ふーん…」
歩いていくうちに森の中へ。けれど危機感はない。ここは村の子供達にとっては遊び場だから。
そんなところに来たからだろうか、それともあいつらの話題なんて出したからだろうか。声が聞こえた。それは子供の遊ぶ声。
「ん…?ダメツナ?誰だよそいつ。…余所者…?でもこの村の服着てるし…?」
見つかった。子供グループのリーダーである持田が近付いてくる。
「よ、よう…」
獄寺くんがちょっと恐る恐るって感じで声を返して。…もしかして獄寺くんて、意外と人見知り?
持田は暫く考えて。けれどまぁいいかという結論に至ったらしい。子供界では余所者も何も関係ない。
「ああ、オレは持田ってんだ!向こうにいるのはふぅ太とイーピン。…な、ダメツナなんかと一緒にいないでオレたちと遊ぼうぜ!!」
そう言って持田はなんの断りもなく獄寺くんの手をぐいって引っ張って…獄寺くんがオレから離れる。
「ちょ…止めろよ!駄目だって!!」
「ダメツナは引っ込んでろよ」
持田の目は獄寺くんしか見ていない。オレのことなんて見ていない。獄寺くんが遠ざかる――…
「…あの、さ」
獄寺くんが動く。ちょっと遠慮気味に、持田に声を掛ける。
「遊びに誘ってくれるのは嬉しいんだが…ツナも一緒じゃ、駄目か?」
「え?ダメツナも?」
持田がオレを見る。ていうかダメツナダメツナうるさいよ。
「そう人の悪口は言うなって…な。頼むよ」
持田は暫し思案させて。オレを見て。獄寺くんを見て。
「…ま、いいけど」
あっさりと承諾した。それはちょっと意外で。
「ほら、ツナも行こう?」
オレはそう言ってくる獄寺くんに手を掴まれて。そのまま引き摺られていった。
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