幸せになる方法
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「…で、遊びって何するんだ?」

「そうだなー…宝探ししてもいいし、森の奥まで探検してもいいし…」


決まってないのなら誘うんじゃねぇよ。まったく、折角オレと獄寺くんが二人きりで楽しんでいたというのに…ぶつぶつ。


(…ツナ、そういじけるなって)

(いじけてなんか、ないもん)


…と、前方からイーピンが何か言ってるのが聞こえる。しかし言葉が分からない。

彼女は遠い地から来たばかりで、この村の言葉をまだ覚えてないから。しかし獄寺くんは彼女の前まで歩いていって。


「ん?…どうした?――あの花がほしいのか?」


そう言いながら獄寺くんが崖の上に咲いてある花を指差す。イーピンの表情がぱあっと明るくなった。


「え、獄寺くんイーピンの言葉分かるの?」

「ん?見てりゃなんとなく分からないか?」


いや分からないよ。さっぱりだよ。

…それともあれかな。獄寺くんあの洞窟にいる前は旅していたって聞くし、それの影響…?


「あれか…よし、ちょっと待ってろ」


言うや否や持田はひょいひょいと崖をよじ登っていく。


「おお、すげぇ…でもあまり無茶しないほうがいいぞ!崩れるぞ!!」

「平気だって!こう見えて運動能力には自信があるんだー!!」


そういう間にも持田は登っていって…凄い。もうあんな高みまで。

獄寺くんは心配なのか横で大丈夫なのかと不安そうに見つめていて。


「…そんなに心配しなくても大丈夫なんじゃない?」

「…そうだといいんだけど…」


と、獄寺くんの目が見開かれた。何事かとその目を追うと…持田の手元が崩れて、持田の身体が宙に浮いて…いや、落ちていた。


「う、ぁぁああああ!?」


持田の声から悲鳴が上がる。オレもふぅ太もイーピンも息を呑んで。ただただ立ち竦むことしか出来なくて。


…ただ一人、獄寺くんを除いては。


「―――危ねぇ!!」


獄寺くんは叫んで、走って…落ちてくる持田の身体を受け止める。


ずっしゃあああぁぁぁぁあああ!!!


二人の身体は転がって…獄寺くんが大きな木にぶつかって。辺りに大きな衝動を響かせてようやく止まった。


「ご、獄寺くん!!」

「持田兄!」


オレたちは二人に駆け寄る。先に動いたのは…持田だった。


「え…痛くない?ご、獄寺!?」


持田が獄寺くんを揺する。けれど獄寺くんには何の反応もない。


「獄寺くん…?獄寺くん、獄寺くん!?」

オレも獄寺くんを揺すって。…そうしたら、獄寺くんは微かに身動ぎして。


「ん…―――いてて」

「ご、くでらくん…!無事でよかった!」

「全然無事じゃない。全身擦った」


そう言われて見てみれば確かに獄寺くんのむき出しになってる白い肌は赤くなっていて。…痛そう。


「って、確かに痛そうだけどあの高さから落ちてそれだけって奇跡だよー!」

「そ、そうだよ獄寺くん!死んでもおかしくなかったんだよ!?」

「そう言われてもな…」


獄寺くんは暫く腕とかをさすっていたが…やがてそれも治まったのか。それを止めて立ち上がった。


「ご、獄寺…本当にお前大丈夫か?」


心配そうにそう言うのは獄寺くんに庇われた持田。ちなみに彼は怪我らしい怪我すらしておらずぴんぴんしている。


「平気だって。お前の方こそ怪我とかないのか?」

「いや少しは自分のことを心配しようよ!!」


そうやって獄寺くんを心配するオレを、何故だかみんなは少し驚いた顔で見ていた。


「…ツナ兄、変わったねー」

「え?」

「明るくなったよな。よかったよかった」

「……」


黙って睨んで、少しみんなを黙らせる。…まったく、やな事を思い出させないでほしい。


「…?なんだ?なんの話だ?」


一人だけ取り残されてる獄寺くん。オレはそんな獄寺くんの手を引いて。


「なんでもない。…行こう。さっきの衝撃で落石とかあるかも」

「あ…?あ、ああ」

「ちょ、おい待てよツナー!」


獄寺くんをどんどん引っ張って森の中を突き進む。そしてその後ろを持田たちが着いてきていた。