幸せになる方法
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それからオレたちは、まぁ子供らしく遊びまわった。
オレはずっと一人だったから。みんなと遊ぶのは本当に久し振りで。
…こういうのは、あの時以来で。
……。
いや、オレよりも獄寺くんだ。
獄寺くんはずっとずっと独りで。同い年ぐらいの子たちと遊ぶなんて体験したことなかっただろうから本当楽しそうで。
獄寺くんが笑うのは、嬉しい。
もっとずっと笑っててほしい。まだ獄寺くんは笑うことを覚えたばかりだから。
日が暮れて。みんな帰る。
オレと獄寺くんも。帰る。
「あー…、疲れた…」
「明日もきっと疲れるよ」
「マジか…勘弁してくれ」
持田たちが帰る前。
持田たちは獄寺くんがいたく気に入ったらしく、明日もまた遊ぶとそう半ば無理矢理約束させられていた。
「逃げちゃ駄目だよ?もし逃げたら…みんなで獄寺くんのいる洞窟まで押し寄せちゃうから」
「それだけはマジで勘弁だ…あそこにはまだツナしか来てほしくない」
―――。
それは。
獄寺くんは。それは本当に無意識で言ってるんだろうけど。特になんの含みもなかったんだろうけど。
なんていうか…どうしよう。それを言われただけで凄い嬉しいんだけど。
「どうしたー?ツナ」
「な、ななななんでもないよ!うん、オレも獄寺くんと二人っきりなときもほしいかな!」
―――よかった。
獄寺くんが笑って、みんなの所にいるのを見るのは。それは喜ばしいことであり…でも少し切ないことでもあって。
獄寺くんがオレの所から離れていくのは、ちょっと…いや、かなり寂しかったけど。まだ獄寺くんはオレと共にいてくれて。
…こうやって。一緒に帰ってくれて。
獄寺くんがどこか遠くへいっちゃうようで。それが少しいやだったけどでもその心配もなさそうだった。
オレが小躍りしたい気分に駆られていると、獄寺くんは沈む夕日をじっと見ていて。
「…獄寺くん?どうしたの?」
「…ん、や。なんでもない」
獄寺くんは笑って。そうしてオレを通り過ぎる。洞窟まで歩いていく。
獄寺くんがオレを追い抜くとき。ぽそりと。
「―――三日。って所か」
なんて。そんな声が聞こえて。
何の事かも聞きたかったけど。独り言かも知れなかったし。聞くのは躊躇われた。
オレは獄寺くんが見ていた夕日を見て。それから獄寺くんの後を追う。
――その、遠い遠い空の向こうで。
「ようやっとここまで着ましたねー」
「はい、二人ともよく頑張りました」
「…まだ、全て終わってませんが」
「おやおやそうでしたね。いやはや、長旅でようやく落ち着けると思ったら。つい」
「もうすぐ全て終わるんですねー」
「…そう。全部終わる」
「はい、終わらせましょう。…あとどれくらいで村まで着きますか?」
「…あと―――」
オレたちの村に旅人と称する三人組が来るのは、僅か三日後のこと。
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それは転機か。分かれ道か。
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