幸せになる方法
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夢を見た。夢を見た。それはずっと昔の忘れてた夢。

彼女の夢。それはオレの終わりで、そして始まりの夢。


目が覚める。酷く身体がだるかった。

ゆっくりと身を起こすと頬を何かがつたる。確認するのも億劫で目を拭った。

昔の夢だった。懐かしい夢だった。

…そして。思い出したくない夢だった。


ため息一つ。窓から空を見ると今日も憎たらしいぐらいの快晴で。

……獄寺くんに、会いに行こう。

なんだか無性に彼に会いたい。

今日は普通に学校の日で。まだ朝だけど今日は会いに行こう。


だって。逢いたい。


…最近、ずっと二人じゃなかったしね。

あれから三日経った今日。なんだか毎日持田たちと遊ぶ羽目に陥っていて。

オレとしては獄寺くんと二人だけで充分満足なのに。何故だか獄寺くんは持田たちとの誘いも受けて。


だから今日は。獄寺くんと二人っきりで絶対過ごすの。

…なんだか夕方辺りにはまた。持田たちと会うことになりそうだけど。

いやいや。今はそういうことは考えないで。とにかく獄寺くんの所へ。

そう思って駆け出した。あの場所へ。獄寺くんのいる所へ。


獄寺くんしかいないはずのあの洞窟には。何故か複数人の声が聞こえてきた。

一瞬まさか持田たちが?とも思ったがそれは違う。声が全然違う。


でも…なら。一体誰…?


覗き込んでみるとそこには獄寺くんを含めて四人の人がいて、何かを話していた。

と、獄寺くんがオレに気付く。そんな獄寺くんの微妙な表情の変化を見逃さず、残りの三人もこちらを振り向く。


「おや。誰ですか?」

「ん…知り合い」


獄寺くんがちょっと目を逸らしながらそう言って。オレを誰だと言った少年がそうですかと呟いて。


「へー、魔物にも人間の知り合いっているんでふねー」


獄寺くんと一番離れていた少年がそう放った。その言葉に一瞬気が遠くなる。

魔物。確かに今そう言った。

こいつらは…一体誰だ?そして獄寺くんの何を知っている?


「犬」


嗜める声が聞こえる。さっきオレに誰だと問うた少年だ。

窘められた…犬というらしい少年はぷいっと顔を背けて。


「自己紹介が遅れましたね。僕は骸といいます。こちらは犬。そしてあっちが千種」


骸と名乗った少年はにこりと紳士的に笑い、犬と呼ばれた少年は変わらず向こうを向いたまま。そして先程から一言も話してない千種というらしい少年はほんの少しだけ会釈して返した。


「それで…その、一体あなたたちは何なんですか?何の用で獄寺くんに?」

「えーと、永劫の時を生きるという魔物の噂を聞きつけて。東の果てから遥々やってまいりました」


…永劫の時を生きる、魔物。

それは間違いなく獄寺くんを指しているのだろう。けれどそれはもう間違いだ。魔物というだけで白い目を向けられる時はもう終わったのだ。


「獄寺くんはもう魔物ではありません」

「そう。そうなんですよ。僕達もうびっくりしてしまって」


何故だか大袈裟に骸は肩を竦める。それはなんだか芝居掛っていて…気にくわない。


「ただ単に呼び名が変わっただけ…力はそのまま残ってる」


と、今まで黙っていた…千種というらしい彼が始めて口を開く。しかしその言葉の意味は…


「だからなんだって言うんですか。力があるから悪だというんですか。そもそも、魔物ってだけで悪だと決め付けるのは…ナンセンスだと思います」


「―――ツナ」


今まで心配そうに見ていた獄寺くんが始めて口を開く。でもそれはまるで咎めるような口調で…


「獄寺くん?」


なんで、どうして。そんな目をされるようなことは言ってないのに。


「ああ、いえいえいいんですよ。これが普通の反応だと思いますし」

「ていうかー、お前が拍子なさ過ぎなんだぴょん!」


…なんなんだ?一体。今ここで何が起こっている?