幸せになる方法
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誰かの泣き声が聞こえる。
誰なのだろうと問おうとすると、息が苦しかった。
誰かがオレの身体を揺すってる。
何故だか腹が痛かった。
身体が異様に重かった。
重い目蓋を開ける。
世界は、眩しかった。
「う…」
世界があまりにも眩しすぎて。あまりにも鮮やかに感じて。呻いてしまう。
「獄寺くん!?」
心配そうな声で。涙を流しながらオレを覗き込んできたのは…ツナだった。
なんでこいつ…泣いてるんだろう。
「よか、よかった…!獄寺くん!本当…死んじゃったかとっ」
…ああ、そうか。こいつオレの死が怖かったのか…
そうだよな…オレだってあいつらと死に別れたとき…怖くて、苦しくて、悲しかったし…
ツナの頭を撫でてやりたくて。手を伸ばそうとしても手はまるで動かず。
せめて安心させたくて。大丈夫だと言いたくても声はまるで出なくて。
「クフフ、あまり無茶しちゃいけないですよ?隼人くん」
オレの心境を見透かしたかのようにそんな声が降ってくる。視界に人の顔が増える。
骸…
「貴方の体調は今重度の貧血状態に値しますから。無理したらまた気を失ってしまいますよ?」
まぁそれは自業自得なんですから少しは苦しんで下さい、と骸は意地悪そうに言う。
自業自得って、オレを刺したのお前じゃん…
「僕はちゃんと考えて刺していたんです。まぁどっちにしろ絶対安静状態ではあったでしょうけど」
何せ死ぬほど血を抜きましたからね。と骸は遣り遂げた顔で告げて。
言われて見てみれば確かに骸自身はもとよりツナでさえもその身は…恐らくオレの血で。赤く赤く染まっていた。
「む、骸さん…!獄寺くん死んじゃいませんよね?大丈夫ですよね!?」
ツナが心配そうに不安げに骸に問い掛ける。骸は笑みを崩さない。
「ええ。ひとまず絶対安静。栄養のあるものを沢山食べさせれば何とか持ちこたえますよ」
どんな病人だオレは。
「おっと。隼人くん?ご自分の身体の事をもうあまり過大評価しない方がいいですよ?今までとは勝手がかなり違いますので」
あ…?何言ってんだお前。
オレがそんな言葉を乗せた視線を向ければ骸は何故だか咳払いをして。
「魔物の血には力有り。神の血には寿命在り。…人ならざるものの身には思わぬものが宿っているものです」
あー、人魚の肝を食うと不老になるとか。そんなのか。
でもああいうのは迷信だろ?そんなのに振り回されてたまるかっての。
「クフフ。貴方のそういうところ大好きですよ。でも…貴方に限っては迷信ではなかったようですけどね」
「血を抜かれて…今までとまるで違うだろう。力が入らなくて…自身が弱々しく感じられて…」
また視界に人が増える。柿本千種。
こいつもまた…その身を深紅に染めていた。
ていうかまぁ確かに。起き上がれないほど力は入らないし、言葉も発せないほど身体は弱まっている。
呼吸するだけで苦しいし鼓動が早い。気持ち悪い。意識がぐるぐるしている。ていうかなんだか気も遠くなってきた。
「ああ、大丈夫ですか?隼人くん」
全然大丈夫じゃねぇよ。
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