幸せになる方法
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「獄寺くん…よかった。やっと起きた…」
ゆっくりと身を起こすと頬に何かが伝って。無意識に拭う。
って、なんだこれ…なんで、オレ…
「ていうか…ここ、どこだ?」
「えっとね。オレの部屋」
「ツナの…?」
なんでオレはツナの部屋で寝てるんだ…?
「オレが…いや正確には骸さんたちがなんだけど。運んでくれたんだ」
骸…
その名前で思い出す。先程までの出来事を。気を失うまでの綴りを。
「目が覚めてよかったよ獄寺くん。もう三日も寝ていたんだよ?」
三日も…?
「それは…人間的に大丈夫なのか…?」
「さぁ…いや、そんなことよりさ。獄寺くん」
「ん…?何だよ」
「その…大丈夫?起きる前まで、うなされてたんだけど…」
―――。
言われて思い出す。それは記憶。遠い昔にあったこと。
「…ん…その、な。夢を…見てたんだ」
若干口調の歯切れが悪くなっているのは、寝起きだからとかじゃなくて。
「夢?」
「そ。…ずっと昔の。夢だよ」
それは確かに過ごした日々。
街では一人、何もせぬまま時を過ごす。
きっと両親は後悔したことだろう。オレを産み落としたことを。こんな足枷を疎ましく思ったことだろう。
己の好きなことを出来ず。自分のやりたいことを出来ず。望まず生まれた子の面倒を見て。
だからきっと捨てられた。
あの洞窟に捨てられた。両親に見限られて捨てられた。
「ごく…でら、くん?」
あー…やばい。どうしよう。
ここは笑わないといけないのに。ここはなんでもない顔しないといけないのに。なのに目から水が溢れて。零れる。
「っ、わり…ツナ、オレ…なんか、いまっ、すげぇ…弱い」
前までこんなことなかったのに。いつだってあの日の事を思い出しても感情は無感傷に流れるだけだったのに。
なのに今は声が震える。しゃっくりが出て。…寂しくて。
体力がないからなのだろうか。こんなに弱気なのは。寒くもないのに心身が震えるのは。
…きゅっと。温かいものに抱きしめられる。それはツナ自身で。
ああ、駄目だ。やめてくれツナ。
今そんなに優しくされたら…縋ってしまう。寄り添ってしまう。もたれてしまう。
だから引き剥がさないといけないのに。なのにオレはそれが出来なくて。温もりに甘えてしまって。
それから幾分の時が過ぎて…不意に、声を掛けられた。
…後ろから。
「クフフ。お邪魔ですか?」
背後を見ると窓があって。窓の外には骸がいて。
「骸…」
涙を拭ってツナから距離を置いて。オレは突然の来訪者と向き合う。
「何か用か?」
「そろそろ貴方の目が覚めるころだろうと思いまして。様子を見に来たんです」
入れて頂けます?と骸は尋ねてくる。
しかしそう言われてもここはオレの家ではなくツナの家なのだからオレにはなんとも言えない。
「えーっとツナに聞いてくれ…って、ツナ?」
ツナの方へと向き直したら。
何故だかツナは膨れ面で不満そうな顔をしていた。
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いい所をいいタイミングで邪魔してくれやがって…
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