幸せになる方法
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それは本当の出来事なのだろうか。

それが実際にあったとしても。…きっと途方もない程遠くの昔の出来事で。

…本当に子孫代々。伝えてきたと言うのだろうか。

――こんなオレなんかの為だけに。


それから時過ぎて。…ただひたすらに、時過ぎて。

親から子へ。子から孫へ。意思は続き心は繋ぎ。知識を蓄積させ続けて。

夫婦の亡き後もそれは続いて。…そうして。ある日。

やっと。見つけました。


子供が、幸せになる方法。


呪いが解けるだけではもう駄目なのです。

もう呪いが解けても。時は遅くて。

魔物の子供は人間に成る事なく。きっと神へと成り上がってしまうでしょう。

そうして子供は。とこしえに続く生に怯えてしまうでしょう。

だから。その怯えすら取り除く方法。


神を、人間にする方法。


そのための術を見つけて。

そしてその術を身に付けた者たちは旅に出て、そして…


「長旅の末にようやく隼人くんを見つけましたとさ。どうです。感動的なお話でしょう」

「昔話がいつの間にか現在の話になってるぞ」

「クフフ。手厳しいですねぇ。けれどこれで理解出来たんじゃないですか? 僕たちが隼人くんの所へ訪れた訳が」

「ん…そうだな。…わりぃ」

「謝る必要はないのですよ隼人くん。こちらこそ…僕の土地が。僕達の祖先が。貴方のご両親を…」

「…気にすんなよ」

「…ありがとうございます。あの土地の人間を代表して、そのお気持ちを受け取りますよ」

「ん……」


急に、そんなことを言われても。困る。

自然と俯き。気のない返事を返してしまって。


「―――隼人くん」


骸に呼ばれて、その方を見れば…


「な…!?」


近くにいるはずのツナの声が遠くに聞こえる。

骸の顔が限りなく近付いて。その髪からは、何かは知らないが南国を思わせる果物の香りがした。


「骸…?」

「クフフ。そんなにしょぼくれた顔しないで下さい。…笑って下さい。それが僕の願いです」

「そ、それを言うにしてもあんなことしなくてもよかったんじゃないですか!?」

「いいじゃないですか。減るものでもなし」

「そういう問題かー!!」


何故だかツナはいきなり骸に構ってくる。今まで相手してやれなかったのが寂しかったのだろうか。


「ツナ…?いきなりどうしたんだ?さっきまであんなに大人しかったのに」

「そういう獄寺くんこそなんでそんなに冷静なの!?ご、獄寺くん骸さんに、き、ききき…」

「ん?ああ接吻されたな。それが?」


オレの言葉に何故かツナは言葉を失って。


「そ、それがって、獄寺くん…ショックじゃないの?好きでもない相手に、いきなり…されて…」

「そりゃあ驚いたぞ。びっくりした」


でもそれはオレに元気出してもらう為のことで。悪気は無かったんだし…いいんじゃないか?


「クフフ…それはそれはなにやらいいことを聞いてしまいました。ではもう一回…」

「駄目ー!!」


言ってまた近付いてくる骸と、必死でそれを阻止するツナ。なんだか急に賑やかになった。


「あ。やっと笑ってくれましたね?」

「え…?」


僕も悪戯した甲斐があったというものです。と満足そうに骸は笑って。


「あ…悪いな。気を遣わせて」

「いいんですよ。…さて、僕はもう行きますね。目的は果たされましたし」

「ん…そうか」

「クフフ。寂しいですか?それでしたらまた遊びに来ますよ?」

「はは…ありがとな」

「いえいえ…あ、そうだ。そういえば隼人くん。貴方の名前は…お父様が付けられたのですか?」

「ん?ああ…確か親父の家系の関係で、オレの名は親父が付けたはず…だ」

「そうですか」


骸は何故だかすごく…すごく嬉しそうな顔をして。


「とてもいい名ですよね」


なんて言って。何がそんなに嬉しいのだろうかと思うがなんの心当たりもあらず。

そうしているうちに骸は次の話題を出す。


「あ、あと…貴方の苗字の由来…知ってますか?」

「え?」


突然言われたその台詞に首を傾げながら骸を見てみれば…何故かツナが骸を押し倒していた。