枷せられた道
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「なに、そう気を落とすな。縁があったらまた会えるだろうさ」

「うん…そう、だよね」

「そうじゃなくても、お前さんには隼人を条令違反させるためにだしに使わせてもらったからな。何回かは会わせねーと後が怖ぇや」

「シャマル…あの時オレを止めなかったのはその為?」

「まぁ結果的にはそうなったな。別にお前さんがいなくとも、こうなっただろうが」

「この…って、今となったらそれはもう良いや。そんなことよりも離してよ」

そして獄寺くんに抱きつかせてよ。

「アホか。今は薬で衝動を抑えているから良いもののお前、隼人が殺戮衝動に負けたらどうするんだ」

…殺戮、衝動?

獄寺くんを見ると、獄寺くんは申し訳無さそうな顔をしながらオレを見ていて。

「――その、すみません10代目…オレのせいで、10代目に傷が…」

獄寺くんが付けた、オレの頬の一字傷。

三日も経って、ほとんど痕が消えていて。あと数日もすれば完全に消えるであろう傷に獄寺くんはこの世が終わりそうなほど後悔していた。

「いや、こんなの全然いいんだけどね。…ていうか、もうオレに敬語使う必要なんてないんじゃない?獄寺の束縛から逃れられたんだからさ」

「おお、それはその通りだぞ隼人。こんなガキに一々気を使うことはねー。罵倒すらしてやれ」

…罵倒は、出来れば勘弁して頂きたい。

「え、…でも、オレ――」

おろおろとしている獄寺くんを見ながら、さっきの自分の台詞を思い返す。…獄寺の束縛から逃れられた…

「…ああ、そうか。獄寺くんのこと獄寺くんって言うなって。そういうこと」

「ようやく気づいたか。この馬鹿坊主」

「???」

理解していないのは獄寺くんただ一人で。

「じゃあオレは、獄寺くんのことなんて呼べば、良いのかなぁ?」

「そらお前。今の隼人は獄寺でもなんでもない隼人なんだから。隼人以外に呼び名があるか?」

ないね。

「そんなわけで隼人。オレ隼人のこと、これから隼人って呼ぶけど。異議はないよね?」

「…え、あ…はい」

獄寺くん…――隼人はきっと会話に着いて行けてないだろうに反射だけで返事をしてきた。…まぁ、結果は変わらなかったと思うけど。


「――じゃあ、隼人」

「…はい?」

「オレの話を、聞いてほしいんだ」

「…?なんでしょう」

「…今の隼人は、ただの隼人なんだよね」

「らしいですね」

「――だったら何で、いまだにオレに敬語なの…」

「癖みたいなものです。気にしないで下さい」

「気にするって…まぁ良いか。確認したかったのは、今の隼人はただの隼人なんだってことなんだから」

「それがどうかしましたか?」

「うん、…あ、でも隼人聞いてくれるかなぁ?隼人は頑固な所があるから…」

「な、何ですかその目は…大丈夫ですよ。…たぶん」

「隼人がこの頼みを聞いてくれたら、オレなんだって出来るんだけどな」

「なんでも…ですか?」

「そう。何でも出来るし…きっと何でも、頑張れる」

「…分かりました。どんな頼みごとも聞きますから。…オレに出来ることでしたら、ですけど…」

「出来ると思うよー?うん、出来る出来る。きっと余裕だよ」

「そうですか?…じゃあ、なんだというんです?その頼みごとって…」

「うん…ねぇ、獄寺くん?」

オレは出てくる笑いを堪えることも忘れて。未だかつてないとても幸せな気分になりながら。

「何ですか?」

あの日と。同じ台詞を吐いた。


「――オレと、友達になって?」