Roman - 見えざる呪い -
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気が付くと、すぐ目の前に獄寺がいた。

何故か必死な形相で、けれどリボーンの目の中の光を見ると安堵したようにため息を吐いた。


「よかった…リボーンさん何回呼んでも何の反応もなくて…驚きました」


そう言う獄寺にリボーンは特に答えず、首元に手をやった。

もちろん何の痕だって付いてない。息苦しさだって感じない。


夢か…?


しかし夢だとして、それはどこから?

久し振りに見た夢はリアルさ満点だった。ちっとも嬉しくない。


「…?リボーンさん?」

「―――なんでもない。それより、こんな時間にどうしたんだ。お前」

「どうしたって…オレ今日夜番なんですよ。それでリボーンさんを見つけて……声、掛けたんですけどリボーンさん、なんだか様子がおかしくて…」

「………」


「お前の姉に殺される夢を見ていたんだ」などとは流石に言えず、リボーンは口を噤む。その反応に獄寺はどんな思いを抱いたのか…ともかく。微笑んで。


「なんにしろよかったです、リボーンさん」


そう言って、リボーンに腕を伸ばす。

その細い、長い指がリボーンに近付く。

それは先程の夢と…リボーンの首を絞めようと纏わり付いてきた腕とリンクして見えて――


パシッ


気付いた時には、リボーンは獄寺の腕を払っていた。

きょとんとする獄寺。


「…気安く触るな」


そう言ってリボーンは獄寺から背を向ける。

数歩歩いた所でリボーンの懐に仕舞ってある携帯が振動した。

とりあえず取ると、幼い声が鼓膜を刺激した。


『チャオ。リボーン』


リボーンはその声に少なからず驚いた。

同じボンゴレにいるとはいえ、同類とはいえ…向こうはこちらを毛嫌いしているというのに。こうして連絡を取ってくることなど初めてではあるまいか?

そんなリボーンの心情など欠片も気に掛けず、向こう…マーモンはマイペースに言葉を放つ。


『呪いを解きたくはないかい?』


はぁ?


それがリボーンの率直な心情だった。


++++++++++

甘い話には裏がある。

けれど悠長に構えるほどの時間を呪いはくれなくて。