Roman - 彼との絆 -
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翌朝になって、オレは自分の視力が完全には失われてないことを知った。
明るさがあると、ある程度の輪郭が分かった。まぁ、それだけなんだけど。
だけど、近い内完全に見えなくなるだろう。オレにはその確信があった。
…オレを診たシャマルも、そう言っていた。
部屋に引きこもっていようかどうしようか思っていたら、ふと外をあの希薄な気配が通った。リボーンさんだ。
オレは外に出た。
「…怪我人は寝とけ」
「怪我じゃないです。視力が落ちてるだけです」
「ほとんど見えてないくせに、そんな軽い言葉でよく済ますな。いいから寝とけ」
「リボーンさんこそ、寝てなくていいんですか?」
「……あのな。お前に心配される謂われはない。お前らとオレとでは身体の作りから違うんだ」
オレはアルコバレーノだからな、とリボーンさんは吐き捨てるように言いました。
「じゃあな」
「あ、待って下さい、リボーンさん」
去ろうとする気配を追うように、オレは歩き出した。
だけれど視覚のハンディは思った以上に厳しく、ちょっとした段差でもオレは足を縺れさせる。
「ぁ―――」
気付いたときには時遅く。オレは派手な音を立てて転んでいた。
「馬鹿が」
リボーンさんの冷たい声が聞こえる。次いで頬に衝撃。リボーンさんにはたかれたみたいだ。
「お前は一体何をしたいんだ?オレの邪魔か?良いご身分だな獄寺隼人」
「そんなつもりでは…」
「結果的にそうなってるんだ。迷惑だからこれ以上オレに付き纏うな。いいな」
リボーンさんは冷たくそう言い放って、その場を去ったみたいでした。
それからオレは、どれほどその場にいたのか分かりません。
ただ通路を通りかかった10代目が酷く驚いていました。冷えていたらしいオレの身体に触れて更に。
オレは10代目に連れられて部屋へと戻りました。
10代目が何かしらオレに気を掛けてくれましたが、オレはろくに受け応えが出来ませんでした。右腕失格です。いえ、視覚が低下している時点で右腕はもう諦めましょう。
10代目が時間を作ってはオレの傍にいてくれます。
だけれどオレは、ひとりであの人を待ちました。
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