Roman - 彼との絆 -
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「オレは貴方の、恋人になりたい」
「………」
「オレは姉貴よりも恋に生ける自信があります。オレは愛人では満足出来ません。…オレは貴方の、恋人になりたい」
「オレは愛人しか作らない主義だ」
「知ってます。…貴方はアルコバレーノだから。中立の立場だから。…呪われた身だから」
「そうだ」
「…ですから、―――オレは貴方の呪いを解きたい」
「無理だ」
オレの望みに、リボーンさんの答えは即答でした。だけどオレもここで食い下がる訳にはいきません。
「今と昔では、きっと状況も違います」
「お前は何も知らないからそんなことが言えるんだ」
「だけど、このままではいずれ貴方は死んでしまいます」
「―――っ」
リボーンさんが、一瞬息を呑む気配を感じました。
「…オレが何も知らないと思ってましたか?」
貴方の様子がおかしいのも、貴方が苦しんでいることも。知らないと思ってましたか?
「………」
「貴方が苦しんでいるのなら、オレも痛みを感じたい。貴方を思うことで痛みを感じれるのなら、それはオレにとっては嬉しいことです」
「…たとえ、死ぬことになってもか」
リボーンさんの問い。オレは即答しました。
「オレは死にません」
「………」
「オレは貴方の五番目の愛人になるのではなく、貴方の最初の恋人になりたいんです。だからオレは貴方の呪いが解けるまで…死にませんよ」
自然に、笑みがこぼれた。
…今、リボーンさんも笑ったような、そんな気配がしたのですが…これは気のせいですよね。きっと。
だけれど、
「そうか」
聞こえた声は、とてもやわらかなものでした。
それだけで嬉しく感じるなんて、オレはなんて現金なのでしょう。
「じゃあ喜べ獄寺。お前をオレの愛人にしてやろう」
「リボーンさん…ですからオレは、」
「まだオレの呪いは解けてない。だからそれまでは愛人だ。不服か?」
「不服といいますか…」
「いいから素直に喜んでおけ。オレはどんな間違いがあったとしても、お前とだけは関係を持たないって決めてたんだから」
うわぁなんですかそれ。酷くないですか?なんでオレだけそんなに徹底されてたんですか?
……と、気付けば近付いてくる気配。リボーンさんがオレの腕に触れる。
「見えるか?」
オレの視力はまだ少しだけ、残ってる。
だけれどすぐ傍にいるはずのリボーンさんは見えない。
「いいえ」
「なら、これなら?」
リボーンさんがオレの胸元までやってくる。だけれど…
「見えません」
「そうか…これでどうだ?」
リボーンさんがオレの肩までやってきました。こんなに近いのなんて初めてです。ですが…
「残念ながら」
と、リボーンさんの手がオレの頬に触れました。そしてやっと、黒い輪郭が形を帯びて見えました。
「…見えるか?」
「……ええ、見えます。見えます、けど…」
その、これはかなり近いというか…なんというか。
「…キスだって、出来そうな距離ですね」
「するか?キス」
「恥ずかしいです」
「誰も見てない。そしてオレはしたい」
………リボーンさんいきなり変わりすぎです。どうしたんですか?
「…そうだな、獄寺。お前の馬鹿みたいな度胸に敬意を表して教えてやる」
……?
「オレは実はお前に三つの隠し事をしていた。一つ。さっきも言ったが、ビアンキの死はオレが原因。二つは……実はオレはかなり前からお前に好意を持っていたことだ」
不幸にさせたくなかったから、わざと冷たく当っていた。なんて嬉しくも恥ずかしいことを言うものだから、オレは三つ目の隠し事を聞きそびれてしまいました。
そして、
「……ん、」
オレは最愛の人と、口付けを交わしました。
オレの身体が震えます。
だけれどそれは歓喜の震えではなく、
―――激痛による、痛みででした。
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思えよ想え。おもう程に―――呪いは伝染る。
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