Roman - 緋色の約束 -
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彼が連れられたのは、とても大きな施設。どうやらここはある大きなマフィアの建物みたいです。

彼の他に、連れられてきた人間はたくさんいました。女性の姿もありました。


その中で…彼は幼馴染の姿を見つけます。

腐れ縁もここまでくるか…と彼は呆れました。


「何でお前までここにいるんだ…」

「そりゃこっちの台詞だぜコラ。…まぁ、オレは惚れた女のため?」

「なに言ってんだ!!!」


と、幼馴染の後ろから女性が殴り掛かりました。知った顔です。鬼教官のラル・ミルチでした。


「…ここは何だ。一体何をされるんだ?」

「さぁ。噂によると、オレたち実験体なんだってよ。成功すればなんか強くなれるんだと」


「強さなんか要らん」


彼にとって、力は不要でした。

それでも望むとするならば、あの日々を奪った彼らを屠るだけの力ですが…


「お前も知ってるだろ。オレの夢は、教師だ」

「変わってねぇな」


そうして二人は笑いました。

彼は久し振りに笑いました。


彼が望んだのは、自分を先生と慕う彼らの所へ帰ること。

それだけでした。

それだけを思っていました。

そして…