Roman - 緋色の約束 -
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「生き残りは、七人か」
それなりにいた成功作は、一握りも戻っては来なかった。
「…お前も戻ってくるとは。驚きだぜコラ」
「コロネロか…どういう意味だそれは」
「もう会えないと思ってた」
「…まぁ、確かにオレはお前とは違って重火器も持ったことなかったけどよ…」
「違う」
「?」
「…帰ってこなかった奴がどうやって死んだのか。知ってるか?」
「さぁな」
どうやって死んだのか。
少し前まで遠い世界の話だったのが、いまや眼前で行われている。…行っている。
「自害したんだぜ。コラ」
コロネロは目の前で自殺した者を見たという。自分のこめかみに銃を宛がって、そのまま撃ったのだと。
「死んだ奴は全員が全員、自害だって話だ。主に殺し合いも知らない一般人。…だから殺しの負荷に耐え切れず、死んだ」
肉体ではなく、心が。
だから小さな村で教師をしていただけのリボーンも同じく自害しただろうと、コロネロは思った。
だけど違う。
小さな村で教師をしていただけだったからこそ、リボーンは生き残った。
リボーンとて、自害は考えなかったわけではない。
むしろ、何度その道を選ぼうとしたか。
だけどそうしようとする度に、教え子たちの顔がちらついた。そして思い出す。
―――必ず戻ってくるから、それまで待ってろ。
戻ると言った。約束した。
だから死ぬわけにはいかなかった。
人を殺す度に、死にたくなる度にあの子たちの名前を呟いた。
そうしていたら、全てが終わっていた。それだけだった。
だけど……
ふと、思う。冷静になった頭で。
…今更、戻れるのか?
赤く染まったこの手で、あいつらに触れられるのか?
血を浴びたこの身体で、あいつらを守れるのか?
そして…
人を殺した自分が、何かを教えれるのか?
戻ると言った。戻りたいと願った。だけど…本当に、戻ってもいいのか?
そもそも今の自分の姿すら変わっているというのに。
彼らが待ち続けている、彼らが先生と呼び慕う青年は…もうどこにもいないのに。
「………」
「…どうしたんだ?コラ」
急に黙り込んだリボーンに、コロネロが声を掛ける。
「…いや、なんでもな…」
なんでもない。そう言おうとしたリボーンだったが、言えなかった。
急に激痛に苛まれたからだ。
「…っ!?」
思わず膝を突くリボーン。見れば隣のコロネロも、他の生き残りも同じように苦しんでいた。
「ほう。まだ改良余地があるみたいだな」
平気そうなのは、自分たちをそうした男たちだけだった。
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