Roman - 美しき思い出 -
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それは春のことだった。日本の学校に転校してきて間もなかったとき。ある一室で見つけた古びたピアノ。

懐かしくなって、思わず手を伸ばした。

盤を叩けば当然のように音が出て。あとはもう指が勝手に動いてた。


…今思えば、どれくらい弾いていたんだろうか。思いのほか集中したようでちっとも覚えてない。

それだけ集中していたときに声を掛けられたものだから、本当に驚いた。


綺麗な音だな。


声が、降ってきた。


見れば、窓際にあの人が座っていた。春の花びらが風に飛ばされて室内に入ってくる。

そのときのオレの動揺ったらもう。まさかあのリボーンさんに声を掛けてもらえるなんてと色んなところが凄いことになってたもんだ。

続きを弾け。なんて言われたけど緊張のあまりに上手く弾けなかった。外で鳴いていた鳥の方がよっぽど上手かった。