Roman - 美しき思い出 -
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それは秋のことでした。その季節の虫の音は綺麗でした。そして空に浮かぶ月も。

あの頃は既に、あなたには嫌われてるのだと思ってました。だってあなた、オレにだけ冷たいんですもの。

まぁ、銃も殺しも知らない一般人の方が優先だった。というのは分かります。

オレは一応ボンゴレの人間ですから、向こうで一通りの訓練だって受けました。


…だけどオレは、あなたの授業も受けたかったのですけど。


あの人が「オレは格下は相手にしないんだ」と言ってるのを聞いて、なるほどオレは格下なのか。と納得しては落ち込んだりもしました。

ああ…オレは牛並みなのかと。あれはへこみました。

だというのに。


なにしょげてんだ?


なんて声を掛けられて。途端に元気になったオレは自分の現金さに呆れましたね。

あなたの気紛れの一言がどれだけオレを一喜一憂させるかなんて、心が読めるはずのあなたは何故か分かってませんでした。

オレの心などわざわざ読まずとも分かる。と言うことだったのでしょうか。全然分かってなかったですよ。ある意味助かりましたけど。