Roman - 黄昏のアルコバレーノ -
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広がる荒野。そこには誰もいない。何もない。

当然だ。むしろまだここに人がいた方が驚きだっただろう。

―――オレは戻ってきた。オレ以外の誰も知らない約束を果たしに。…遅すぎる帰還だった。


…どうしてオレは、こんなところまで足を運んでいるのか。

もっと別に、しなくてはいけないことがあるんじゃないのか?

呪いを解く方法を探すとか、激痛を防ぐ方法を考えるとか、アルコバレーノ殺しの主犯を見つけ出すとか。


自分の行動の支離滅裂さに、呆れを通り越して笑えてくる。


オレに心があるならば、もう壊れてるのかも知れない。

オレに自我があるのなら、それはもう狂ってるのかも知れないな。


軋む身体。灼ける痛み。


…なるほど。身も心もぼろぼろって多分こんな感じなんだろうな。

と、そう思っていたら携帯が振動した。

それを取ったのは癖でだ。思わずだ。そうでなければ無視を決め込んでいた。捨てていたかも知れない。

ともあれ…オレは取った。そして聞こえてきた声は―――



『Bon soir (こんにちは)―――リボーンさん』



オレの、恋人の声だった。