Roman - 恋人からの返答 -
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そこまで言うと、クロームは伝言が終わったのか沈黙した。

オレは思わず背を向けて、帽子を深く被り直す。


「………伝えておけ」

「…?」

「オレはお前にそんなことを言われる資格はないと」

「…誰に、伝えますか?」

「お前に伝言を頼んだ相手にだ」

「固有名詞でお願いします」

「………だから、獄寺にだ!」


オレが、そう声を張り上げた瞬間。


「―――――はい」


背後の空気が、変わった。


「…確かに、その伝言……頂きました」


振り向けば、そこにいたのはクロームではなく………


「では、どうしてそんな資格がないのかを教えて頂きたく」

「獄寺…」


ボンゴレで眠っているはずの獄寺がオレの前に。そしてオレの方に一歩。また一歩と近付いてくる。

対して、オレは動けない。獄寺から遠ざかることも。獄寺を制することも。

やがて獄寺はオレの正面に。そしてそっとオレを抱き上げて。

「お久し振りです。リボーンさん」

「……なんの真似だ、クローム。あまりオレを騙るな」

「クローム?騙る?…すいませんリボーンさん、一体何のお話でしょうか」


そう言って、首を傾げる姿は確かに獄寺だ。

だけどここに獄寺がいるはずがない。こうしてオレを抱き上げれるわけがないんだ。

だと、言うのに…分かっているのに。

オレは何故だか抵抗出来なくて。


「…離せ」

「どうしてそんなことを言うんです?オレが嫌いですか?」

「……違う」


そんなことない。そんなことあるものか。



「むしろ、好きだ」



こぼれたかのようにそう言えば、獄寺の口からもこぼれたかのような笑い声が聞こえた。


「…そうやって、言葉にしてくれたのは初めてですね」

「そうだな…」


こんなこと、言うつもりはなかったのに。

どうして、今更言ってしまったのだろうか。


「…獄寺。オレを離せ」

「どうしてですか?」


……………。


「オレが、お前の母を殺したからだ」


だからオレは、愛するお前に抱かれる資格も。好かれる資格も持ってない。

これが三つ目の、お前への隠し事。