Roman - 小さな村の物語 -
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リボーンが連れ去られたあと、残されたのは十数名の子供たち。

壊された家。殺された家族。唯一自分たちを引っ張ってくれる信頼出来る大人であるリボーンも子供たちを助けるため消えてしまった。


残されたのは、気休めとも取れなくともない彼の言葉。



すぐ戻ってくるから、それまで待ってろ。



けれども、その言葉があったから頑張れた。

無力な子供たちは、それに縋りながら生きていった。


嗚呼、けれど。もしも。


…あの時リボーンがそんなことを言わなければ。あるいは「すぐにこの場を離れろ」と言ってくれれば。

あるいは―――


子供たちは自らの先生を待ち続けた。

だけれど先生はいつまで経ってもやってこない。

それでも子供たちは待ち続けた。

先生は絶対に約束を守るからと。絶対に来てくれると。そう信じて。


だけど…


来たのは、先生ではなく別の大人たち。

来たのは、あの日とはまた別の怖い大人たち。

人を人とは思わない黒服の大人たち。

人を殺す道具をあっさりと使う大人たち。


今度は誰も守るものがいない中、子供たちは連れ攫われた。

…実験体として。


小さな村の子供たちがひとり。またひとりと動かなくなっていく。

その中で、子供たちは思った。

ああ、先生もきっと同じことをされたんだ。そして*んだんだ。

小さな村の子供たちが消えていく。ひとり、ひとりと*んでいく。

最後に残った少年も目玉に何かを入れられ激痛のあまりショック死した。


いや、死んだと思った。


けど、少年はまた目覚めた。身体は動かず言葉を発することも出来なくなっていたが意識も視界もあった。

その中で、聞こえてきた声は。


―――――成功だ。


その声が聞こえてから暫くして。少年は久し振りに身体の自由を得る。

だけど自分の身体は別人になっていた。一つだけ自分だといえる箇所は、右目だけ。

赤く鈍く濁く光る右目だけが、唯一自分だと言えた。

そして少年は自分たちを殺し壊し蹂躙した彼らを*して外の世界に出た。


けれど…どこへ行く?


あの村の子供たちは自分を残してもう誰も残ってない。先生だって、きっとみんなと同じように*んでしまったに決まってる。

…自分も行こう。みんなの所へ。

みんなに会いに行こう。この世界は醜すぎるから捨ててしまおう。

そうして少年は五つの世界を回り…そしてまた人間の世界に戻ってきた。


理由は二つ。


一つは、再会した共に……仇を頼まれたから。

そしてもう一つは…先生を見つけるために。


五つの世界のうちに、村の子供たちは全員いた。それぞれの世界で再会を喜び合った。

だけれど、ひとりだけ…ある意味最も重要な人がいなかった。先生だけが、いなかった。


全てを探してないのは、人間界のみ。

だからきっと、先生はあの醜い世界に未だいる―――


戻ってきた人間界では、変わらずあの黒服たちが我が物顔で醜く世界を支配していた。

次の少年の依り代となったのは…まるでいつぞやの日の再開のように。あるマフィアの施設で実験体となってた子供。

永い時が過ぎたはずなのに、何もかもが変わっていなかった。


嗚呼、やっぱりこの世界は醜すぎる。


先生を見つけて、こいつらを殺しつくさないと。

少年は在りし日と同じようにその施設の大人たちを殺した。


残ったのは、いつかの自分たちのようにどこかから連れてこられた子供たち。

縋るような視線に晒され、苦笑を一つしたのを覚えてる。そして、


一緒に来ますか?


彼らを前に口から出たのは、まるで指導者のような言葉。まるで教育者のような、教師のような……先生のような言葉。

マフィアを、黒服の男たちを殺していこう。

彼らは世界に不必要だ。

そう思い、少年は宣言通りに殺していった。その片手間で先生を探しながら。

だけど。なのに。