Roman - 小さな村の物語 -
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「お前が…首謀者だったんだな」
「クハハ…何を今更。僕は最初から言ってたじゃないですか。マフィアは嫌い。マフィアは滅ぼす。…アルコバレーノが弱まってたので、チャンスだと思ってですね」
10代続いた技術にも限界があったのか、リボーンを初めとするアルコバレーノはみな体調に異変を感じていた。
…恐らく、誰が何もしなくとも。いずれはそう遠くない日にみな息絶えていただろう。
リボーンは口を動かして言葉を放とうとする。それは在りし日の生徒の名前。最初の教え子の名前。…目の前の少年の本当の名前。
だけれど、目玉はそれを制する。
「止めて下さい。ここにいるのはこの村の子共ではありません。この村の子供はみな死にました。ここに者の名は六つの世界を巡り道を辿った亡骸…六道骸」
「……そうか。なら、骸」
「はい。なんでしょうか呪われし赤ん坊の生き残り。最後のアルコバレーノ」
「オレが憎いか?」
「そうですね。とっても」
「なら、殺しはもうオレで止めておけ。オレがお前の憎しみを受け取ろう」
「あなたは…」
骸は吐息を一つ。そしてその視線は遠い昔へ。
「そうして、自分だけが苦しみを背負って。…残されたものがどう感じるかと考えたことはありますか?」
「そうだな。いつも悪いことをしてると思ってる」
「思ったうえで、止めないと」
「そうだな」
「たちが悪いですね」
「耳が痛い」
「…分かりました。殺しはあなたで最後にしましょう。今日までたくさん殺しましたし、あんな一般人から成り上がった子供を殺しても楽しくもありませんしね」
「出来れば、ツナのサポートもしてやってくれ」
「お断りですよ。僕は彼が大嫌いですから」
「そう言うな」
言われた途端に、骸は顔を歪める。そしてその顔を見られないようにするためか、俯く。しかしすぐに顔を上げて。その顔には歪んだ形跡はもうなくて。
「随分と―――信頼してくれますね。僕はあなたの恋人を辱めたのに」
「なに…?」
眉をひそめるリボーンに骸が笑う。
「先ほどの電話。楽しかったでしょう。…あれは彼の身体に憑依した僕ですよ」
「お前…獄寺の身体に傷を付けたのか?」
クックと、更に骸は笑う。そんなことは重要ではないと言うように。
「―――死者に多少の傷を付けるぐらい、いいじゃないですか」
リボーンは目を見開き。息を呑んだ。
「実際の距離を置けば呪いも離れると思いましたか?残念でした。それは何の意味もない行為でした」
そんなリボーンに、骸は容赦なく言葉を叩きつける。
「彼は死にましたよ。ずっとあなたを待っていたのに」
リボーンは無意識にか、一歩後ずさった。けれど骸は同じように一歩踏み込む。逃しはしない。
この世界にはもう、彼を愛した愛人はいない。
この世界にはもう、彼と同じ苦しみを共有した友はいない。
そして―――…小さな彼に恋をした、恋人も。
骸は笑みを強くして。手にした槍を構えて。リボーンに放った。
リボーンは抵抗らしい抵抗をもせず―――その身に槍を受けた。小さな身体を槍が貫通した。
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