Roman - 最後の生と死の物語 -
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呟かれる小さな声に、答えるものはない。
どうすればよかったかなんて、解らない。
自分がしたことに意味があったのかすら解らない。
だから、もう…死んでしまおう。
生きてるだけで苦しいのなら。
生きてるだけで愛する人を苦しめるのなら。
彼の愛する人は共に生きたいと言ってくれた。アルコバレーノになってから一度でも幸福を味わったことがあるのなら。
…不幸なことに、あるいは幸いなことに。幸福を味わったことはある。
それこそ、今愛する人と初めて会ったときに。
それは自分に向けて笑みを放たれたとき。ぬくもりに触れたときは、救われたような気すらした。いや、間違いなく救われた。
…だが、その彼を今苦しめているのは自分なのだ。
だから死のうと思った。
だけどそれを止めたのは、
「……?」
誰かの気配。
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