10年完熟蜜柑
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「はい、リボーンさん。あーんして下さい」
「ん」
ぱくり。もくもく。ごくん。
「あ。リボーンさん…。ふふ、口元が少し汚れてますよ」
獄寺くんが幸せそうに笑いながらリボーンの口を拭う。
リボーンは滅多に他人にその肌どころか服の上からだって一触れすらさせないけれど、獄寺くんに限っては例外に当たるらしい。
「リボーンさんもこういうところは年相応なんですね」
「幻滅したか?」
「とんでもない。とても可愛らしいと思います」
「おめーの方が可愛いと思うぞ」
「もう、リボーンさんたらお上手なんですからー」
…なんだろうこのバカップルな会話は。
ていうか本人達にとってはそのつもりは毛頭ないんだろうけどそう惚気ないでほしい。しかもオレの目の前で。
「…あのさ。二人とも。いちゃつくならせめて他の所行ってくれないかな…」
「わ、10代目…いらっしゃったんですか?」
「覗き見とは趣味わりぃなツナ」
いや。ここオレの部屋だからね?ボンゴレで一番偉いオレの部屋だからね?
ていうかなんでこの二人はオレの部屋で蜜柑とか食べてるかな…。てか、サボり?
「10年前を思い出しますねー」
「懐かしいな」
そうだね。懐かしいね。キミたちはあの頃から少しも変わってないよね。
「獄寺。も一個くれ」
「えっと…。すいませんリボーンさん。品切れのようです」
「んだと?気の利かねぇ部屋だな」
それオレへのあてつけかなリボーン。オレ用の蜜柑全部食べといてオレへのあてつけかなリボーン。
「えーと…今10代目が食べようとしているので最後みたいですね」
「ツナが触ったのなんか食えるか」
「酷くない!?それってあまりにも酷くない!?」
ていうかオレなんかした!?リボーンオレに限って辛辣じゃない!?
「獄寺。どっかから喰いもん持ってこい。腹が減ったぞ」
「んー、オレとしてもそうしたいのですが。残念ながら今から任務に行かなければなりません」
「そうか。ならオレになんか喰うもん寄越してから行け」
リボーン。言ってることが全然変わってないよね。何そのオレ様属性。
でも応えようとするところがなんとも言えず獄寺くんらしいよね。ポケットとか漁ってる。
「…やっぱり持ち合わせがないですね。すいません、これで我慢して下さい」
そう言ったかと思うと。獄寺くんは。
「ちょ…!」
思わず声が出た。
だって…だって…ご、獄寺くんからリボーンに…キスを…!
「…あ、すいませんリボーンさん、もう時間です。夜になったらオレのこと食べて良いですからそれまでお腹空かせてて下さいね」
そして何事もなかったかのように「失礼します」と一礼をして(ああ、一応オレの部屋だって覚えててくれたんだね…)獄寺くんは部屋を後にした。
「…さて、じゃあオレも仕事に行ってくるぞ」
「ああ、うん。気を付けてね…っていきなり乗り気じゃんよ。獄寺くん来るまで仕事うざいって言ってたのに。どうしたのさ」
「動いて腹空かしたほうが喰う飯はうめーからな」
「ああそうかよ前言撤回少しは怪我して帰って来い」
オレの黒い声援もリボーンにとってはどこ吹く風程度の効力しかないらしく。こっちは一礼すらもせずに部屋から出て行った。
人の気配が消えて、部屋の中にはオレひとり。
とりあえずオレの手の中に納まっていた蜜柑一つを口の中に放り投げる。
「…うっわ」
蜜柑は、死ぬほど甘かった。
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リクエスト「「蜜柑の香水」の10年後」
龍弥様へ捧げさせて頂きます。
リクエストありがとうございました。
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