最後の願いでさえも聞き入れられぬのなら
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―――そんなことしたらオレ、死んじゃいますよ。


いつも真面目な彼が、冗談めかして言ったから、良く覚えている。


……でも、あれは本当のことだったのか。冗談でも、なんでもなく。


「……あいつは、もう長くない」


シャマルの声で、急に現実に戻された。


「―――――え」

「これはお前さんのせいじゃないがな。隼人は今日イタリアに飛んで、ボンゴレの仕事で自爆して死ぬ予定だった。これは前から決まっていたことだ」

「なっ…!?」


確かに今日、獄寺くんはイタリアに飛ぶ予定だったけど…でもそれは、ダイナマイトの仕入れであって…


「任務で自爆した後は、オレらが適当に嘘を吐けばいい。帰りの飛行機が墜落したとかな。後はてめぇらが勝手に泣いて、立ち直ればいい」


そのあまりにも突き放した言い方に、オレはカチンときた。


「な…んだよそれ!勝手に泣いて、立ち直ればいいって…!ふざけるなよ!!」

「ふざ…けるな?」


ギロリ…まさにそんな擬音が似合いそうな眼をしながら、シャマルが応える。


「ふざけてんのはてめぇの方だろうが!オレがどれほど説得しても諦めさせられなかった隼人の計画をぶち壊しやがって!てめぇ何様だ!」


計画…飛行機事故に見せかけて、でも本当は、自爆して……

「お前がボンゴレ10代目候補ってだけで、隼人はお前に気を使って、自分の死の真相すら、欺こうとして――」


「………っ!!」


シャマルの言葉が痛い。だけど真実だ。


「お前が―――っ」


カコーンッ!!


遠くから、何かが飛んできた。それは真っ直ぐにシャマルにぶつかって、軽快な音を叩き出した。

床に落ちたそれは置時計。やってきたのはオレの後ろの部屋の中。思わず部屋の中に目を向ける。

部屋の中には、息も絶え絶えに、置時計を投げたであろうポーズのまま固まった、獄寺くんの姿があった。


「……こら、馬鹿医者……10代目を、いじめんな」


獄寺くんはそう言うと、ふらりと倒れこんでしまった。


「獄寺くんっ!!」

「隼人!!」


オレとシャマルは急いで獄寺くんの元へと走った。


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願わずにはいられない。

嗚呼―――どうか、全ては悪い夢であって…