桜舞い散る夢の話
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夢を、見たんですよ。


そうあいつがややぼんやりとした顔で言ってきたのは、いつのことだっただろうか。

それは遠い昔のようにも思えたし、つい最近のような気もした。

夢? とオレが聞き返すと、あいつは肯定してその夢の内容を話した。


夢の中のオレは、一枚の花びらなんです。

野か、あるいは木々に芽吹いた花弁が風に煽られ抜け落ちた、枯れ果てるしかない花びら。

オレは風に乗って、空を舞ってるんです。

風は途切れることなく、絶えず吹き続けていて。

オレは野を、山を、村を、街を通り抜けて。

朝も、昼も、夜も飛び続けて。

ありえませんよね。

風が吹き続けることも、一枚の花びらが延々と飛び続けることも。

でも、まあ、夢ですから。


夢なら、なんでも有りですよね。と苦笑するあいつに、オレは話の続きを促した。

あいつは一瞬きょとんとして、続いて意表を突かれた顔になって。

あいつはオレの反応が意外だったようだ。オレが他愛のない、山も落ちもない夢に興味を持ったことに。

別に、オレも興味があったわけじゃない。

ただ、本当にそれだけの夢なら、あいつはオレに話さない。

話すとするなら、別の人間だろう。同世代の、学生時代を共にしたあいつらだろう。


なのにあいつは、オレに話した。


興味を持ったとしたら、夢の内容ではなくそんなあいつの態度だろう。

あいつは暫し迷ったあと、続きを話しだした。


あいつは……



1.オレを見つけたと言った

2.オレが死んだと言った