病弱羊の見る夢は
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羨ましい。

ツナは素直にそう思った。

そんなことを思っているうちに、だんだん眠くなってきて…

ツナはそのまま眠りへと落ちていった。


「ん……」


意識が浮上する。薄っすらと目蓋を上げる。

顔を上げて驚いた。目の前には獄寺。片手は獄寺と繋がっていて、もう片方は獄寺の頭に乗っかっていた。


(あー…そうか、オレ獄寺くんの看病して…寝ちゃったんだ……)


少しずつ状況を確かめていく。時計を見ればもう夕刻だった。


(そろそろ帰らないとかな…)


そうぼんやりと思ったが…獄寺と繋がっている自分の手。

試しに解こうとしてみる。やはり少しだけの抵抗。でも。


「no…daccanto……」や…行かないで……


この切なそうな、淋しそうな。そんな声を聞かせられて一体誰がこの手を振り払えようか。

ツナは諦めて携帯を取り出す。しかし電池が切れていた。


(あちゃ…仕方ない。獄寺くん、借りるよ)


心の中で獄寺に謝りながら、獄寺の携帯に手を伸ばした。

自宅にコールを掛ける。ワンコールツーコール…やがて受話器が取り上げられて。出てきたのはリボーンだった。


「オレ、今日獄寺くん家に泊まるから」

『ああ、ママンには上手く言っておいてやる』


話が早くて助かった。

ツナは通信を切って、持ってたハンカチを少し水に濡らして獄寺の汗を拭いていく。

そうして夜は深けていった。


翌朝。


「ん……っ…んぅ」


獄寺が目を覚ますと、見慣れた天井が飛び込んできた。


「………」


はて、自分は一体どうしたのだろうか。

身を起こして寝起きの鈍い思考のまま考える。確か自分は、そうだ。具合が悪くなったのではなかったか。

それで敬愛する10代目にメールを送り、それから昼まで寝ていたのだが…水を飲みたくなり、起きて……

………ここから記憶が綺麗さっぱり抜けている。

しかし自分はベッドの上。……と、


…んー」


すぐ傍から、声。

今の今まで全然気付かなかった。慌てて声の主を確認する。と、


「あ…おはよう。獄寺くん」

「じ…10代目……?」


なんとすぐ傍いにいたのは敬愛する10代目。しかも見てみれば手が繋がっている。


「あの…これは……?」

「ああ、昨日プリントを届けに来たんだけどね。獄寺くん倒れてて…オレが看病したってわけ」


その声を聞いて獄寺は自分の体温がサーっと下がるのを感じた。オレは10代目になんてことを……!!


「す、すみません、10代目にお手数を……」


ひたすら謝る獄寺に、ツナはくすりと笑う。


「いいって。それより何かお腹に入れようか。何か簡単なもの持って来る」


言って、台所に行こうとするツナの手を獄寺は離さない。


「……?獄寺くん何かリクエストでもあるの?日本じゃね、病気のときは甘やかしてもらえるっていう暗黙の了解があるからなんでも言っていいよ」

「……えっと…その……あの……なんでも、いいんですか?」


蚊の鳴くような小さな声で獄寺は言う。こんな風に意見を述べる獄寺など見たことがない。


「うん。なんでもいいよ。さすがにフルコースは用意出来ないけど」


ツナがそう言うと獄寺は顔を真っ赤にして、小さな声で、言ってきた。


「もう少しだけ……このままでいさせて下さい」

「え……?」


ツナにとって思いもよらない台詞。獄寺は握る手に更に力を強めて……


「安心、するんです…」


今にも泣きそうな顔をツナに向けて、そう言う獄寺。