幸せな夢
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気を抜く暇もなく弾丸が飛んでくる。オレはとっさに右腕を楯にして頭を守った。

そういえば、あなたはオレが傷付くのを酷く嫌っていましたね。肉を切って骨を絶つやり方を止めろと何度も言われました。


…自分がするのはいいくせに。


楯代わりの腕がどんどん穴だらけになっていく。

皮膚が破れ血が噴出し、肉があらわになり骨すら見える。

長くは持たない。だからすぐに決着を付けよう。

オレはリボーンさんへ特攻しました。撃たれながら。

腕がもげそうになる。オレは走るのを止めない。

脚に。耳に。脇腹に銃弾が当たる。オレは走るのを止めない。

右目に。頭に衝撃が走る。視界が半分消えて頭が重く感じられたけど、


オレは走るのを止めない。


リボーンさんとの距離が縮まる。

リボーンさんはまったく怯まないオレにやや驚いているようでした。

ええ。そうでしょうとも。いつものオレならば痛みに足を止めているでしょうから。


でも、今回ばかりはそうも言ってられないんです。


これはあなたどころか10代目すら嫌う戦法ですから、オレもあまり使いたくはなかったのですけれど。

あなたを殺すためには、これくらいしないといけませんよね?

今のオレは痛みを感じません。


あなたを殺すための、とっておきのオレをどうぞ御覧あれ。


キスすら出来そうな距離まで近付いて。

視界が掠れていく中、オレはあなたの耳元で囁いた。


「―――――さようなら。リボーンさん」


オレは引き金を引きました。

ゼロ距離射撃。

なのにどうしてあなたってば避けてしまうのでしょう?

オレがこんなに血だらけになっているのに。あなたは無傷もいいとこなのに。それでもここまで追い詰めたのに。なのに逃げるだなんて嘘でしょう?


…駄目ですよリボーンさん。

オレは「さよなら」って言ったんですよ?


だから、お別れしないと。


あなたがどこへ逃げるかだなんて、オレにはとっくにお見通しですよ?

既にずたぼろな右腕は、それでも動く。

強く腕を伸ばせば、手に入り込んでくる小さなもの。


…いつだったか、あなたはオレに自分の使っていた銃を下さいましたね。

オレは驚きました。それはあなたが愛用していた、とても大切なものだったから。

持っておけと。そうあなたは言いましたね。

お前が銃を使いたくないことは知っているがと前置きして。

だが使いたいとき、そのとき使えないのでは意味がないからと。

そして使ってしまったとき。悪いのは銃を持たせた自分を恨んでいいからとりあえず持っておけと。


あなたはそう言いましたね。

ええ。そうさせて頂きます。


あなたが悪い。


オレに銃を持たせた、あなたが。

オレに銃の大切さを教えた、あなたが。

オレに銃の指導をした、あなたが。

オレに銃を携帯させた、あなたが。

オレに銃を使えるときは使えと、そう言ったあなたが。


あなたが、悪い。


あなたが逃げるのは、右。

だからオレは薬とは関係無しに感覚のない右手で、見向きもせずにそちらを撃ちました。

確かな手応え。

見れば、あなたが倒れていました。

…ほら、やっぱりあなたは右に逃げていた。

あなたのことなら何でも分かりますとも。


オレが一体どれだけ昔からあなたのことが好きで、あなたのことばかり見ていたと思ってるんですか。


………それにしても、少し悔しい。

あなたを初め撃ったフェイクの銃と、あなたにとどめを射した銃。

オレが自分で選んだ銃と、あなたがオレに合うだろうからとくれた銃。


…やっぱり、あなたの銃の方が使いやすいです。