幸せな夢
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…終わった。とりあえず一つが。

薬を使ったから、自分がどれだけ酷い状態なのかいまいち分かり辛いけど、多分かなりだろう。

きっと早めに手当てをしないと命に関わる。

けれどそれよりも前にするべきことがある。

オレは10代目たちに言ってるから。


リボーンさんの生首を手土産に帰ってくると。


とりあえずそれがあればもう誰もオレが裏切るなどとは言わなくなるだろう。オレの忠誠心がみんなに伝わるわけだ。

だからこれは必要なこと。

そう、そうに違いないとも。

だからこそオレはこんなに後味の悪い思いも、我慢出来る。

これほど気分の悪い仕事も、もうこれっきり。後にも先にもこれを超えるものはないに違いない。


オレは倒れているリボーンさんに向き直る。

横たわるリボーンさんは目を瞑り、血を流していた。

すっと、オレは腰を降ろして………


……リボーンさん。


こんな形で、あなたを見返したくなんてなかった。

こんな形で、あなたを追い越したくなんてなかった。


出来ることなら、あなたの隣で。仲間としてあなたを超えたかった。

そうなったら、あなたは驚いてくれたでしょうか。


喜んでくれたでしょうか。

褒めてくれたでしょうか。


同じ任務に就けたでしょうか。

もっとあなたの隣に立てたでしょうか。


あなたはボンゴレ、オレは10代目。


着いていくと決めたものが違っていた時点で、オレたちの関係は奇跡のようなものでした。

だからそれが壊れてしまったことには、当然という他ありません。


だから悲しくもなく。

無論怒りもなく。

当然誰かを恨むこともなくて。


けれど。

一つだけ…言ってもいいのなら。


あなたと道が別れてしまったのは。

あなたと敵同士になってしまったのは。

あなたともう、笑い合うことも出来なくなってしまったのは。


とても……残念です。


だってオレは、

あなたを殺した今でさえ。あなたのことが好きで。

…あなたを、愛しているのですから。


静かに横たわるあなたは、まるで眠っているよう。

………。

最後ぐらい、いいですよね?

失礼します、リボーンさん。

オレはいつかの再現のように、おもむろにリボーンさんに顔を近付けて。

…音も立てずに、リボーンさんにそっと口付けた。