幸せな夢
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そして、それから数日後。久し振りの休暇、同じ日の休み。オレはリボーンさんに連れられて、リボーンさんの行きつけへと案内された。
てっきり小洒落たバーにでも連れて行ってくれるのかと思っていたけど、リボーンさんの足は街中から外れへとどんどん歩いてく。
そしてやがて、寂れた森の中へ。
そして見えてきたのは、小さな小さな―――…
「教会…ですか?」
「ああ。なんだ、洒落たバーにでも連れてくと思ったか?」
「………まぁ」
実際そう思ったので肯定せざるを得ない。
「それも悪くないんだけどな。傷に障るからまた今度だ」
そう言うとリボーンさんは遠慮する素振りもなく迷いも見せずに突き進んでいく。オレも着いて行く。
教会の中には誰もいなかった。立つ者のいない祭壇には色褪せた金の十字架がはめられている。
ふと見上げれば、ステンドグラスが数点。太陽に反射して光っていた。
と、オレが辺りを観察していると首襟を後ろから引っ張られる。リボーンさんだ。
「リボーンさん?」
「膝貸せ」
「膝?」
リボーンさんはオレをずるずると引っ張って、一番後ろの席まで進んでいく。どうやらそこがリボーンさんの特等席らしく、そこだけ埃が溜まってなかった。
リボーンさんはそこにオレを座らせると、当然の行為のようにオレの膝に頭を乗せた。
「…リボーンさん…」
「なんだ?」
「オレの膝、硬くないですか?」
「普通だ」
硬いのか硬くないのか解り辛い返答ですね。
「―――やっぱりな」
「はい?」
何がやっぱりなのかと、リボーンさんを見るも…リボーンさんはオレを見てなくて。
「?」
リボーンさんの視線を追ってみると…そこには先程も見たステンドグラス。
「お前に似てるだろ?」
「似てますか?」
確かに銀の髪を持っているように見えるけど。
「………オレの方がずっと格好良いですよ」
「そうだな。お前の方がずっと可愛い」
…どうして話が咬み合ってないんでしょうか。
「オレのお気に入りだ」
少し弾んだ声で、リボーンさんが言ってくる。
「お前が遠くに行ってるときとか、ここに来たりしてな」
その光景を想像して、思わず笑ってしまった。
「…また、そんな、リボーンさん……冗談は……」
やめてください、と言おうとリボーンさんを見たら…リボーンさんはいつの間にか目蓋を閉じて静かに寝息を立てていた。
「……………」
まさか本当に…なんてことはないですよね?
そんな、オレがいないときは…やっぱり他の愛人とかに会ってるんですよね?
オレと愛人になってからリボーンさんが他の愛人と一緒にいるのを見かけたことはないけれど、でもきっとそうだ。
そうですよね?
そんな都合のいい夢なんてあるわけないです。
「ですよね?」
小さくそうリボーンさんに問い掛ける。リボーンさんには何も反応はない。
…10代目は以前、「リボーンは寝る時だって目を開けているし、何か起こるとすぐ起きるし。本当に寝ているのか分からない」と言っていた。
姉貴は「リボーンの目を開けたまま寝ている姿も素敵」とオレとリボーンさんが今の関係を持つ前によくそう惚気ていた。
…でも。と、オレは首を傾げる。
リボーンさん……オレの前だと中々起きなくて。いつも目を瞑って眠っているけど。
「オレの前でだけ…とか、そんな嬉しい展開ありませんよね?」
そうリボーンさんに囁くけれど、やっぱりリボーンさんは何の反応も返してこない。
………。
オレはおもむろにリボーンさんに顔を近付ける。
眠っているリボーンさんは年相応に幼くて。この人が本当にあの最強のヒットマンなのかと疑問にすら思えてくる。
…そして。いつもちょっかい出されているからかこんなとき、オレは無性に悪戯心に駆られてしまう。
というわけで、失礼します。リボーンさん。
オレは音も立てずに、リボーンさんにそっと口付けた。
オレからリボーンさんにキス出来るのは、リボーンさんが眠っているときだけ。
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