シンデレラ
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「楽しんでるか?"シンデレラ"」

「あなたは……」


. オレがボンゴレに入ファミリーして数日。

廊下ですれ違ったのは、いつぞやの魔法使いだった。


「……ここの方だったんですか」

「まぁな。どうだ?舞踏会に行っていい経験になっただろ」

「経験というか…なんというか、その…」


いい経験どころか人生変わりましたけど。


「…こうなるって。分かってたんですか?」

「そうだ。すげーだろ」


確かにすごい。なるほど確かに魔法だ。


「つか、予想よりも早かったか」

「…町狩りを予想してましたか?」

「町狩り?何だそんな話になってたのか。オレ一人が行けば済む話だってのに」


そうか。そうだよな。この人が全ての始まりなんだから。


「お前の入れた茶が美味かったからな。また行こうって思ってたのに」

「って、そんな理由でだけで来られても困りますが…」

「そうか?だけどまた行きたい理由は他にもあるぞ」

「どんなですか?下らない理由だったら…」


「お前に会いに」


思わず噴き出した。


「な…男相手に何てこと言ってるんですか!!」

「男だろうが女だろうが、その髪には目を惹かれる」

「………え?」



それは、遠い記憶の物語。


「綺麗な髪だ」


名前も知らない人に、頭を撫でられる。


「珍しい銀の髪だ」


母と同じ色の髪が、あの頃は自慢だった。



「お前は嫌いか?」



そんなことはない。綺麗な銀の色だと、そう言われるのがだいすきだった。


「まぁ、そんだけだ。じゃあな"シンデレラ"」

「待って下さい」


それは、ずっと昔の物語。


「オレは"灰被り"なんて名前じゃありません」


今は隣に母はおらず。


「そうか。じゃあなんて名前なんだ?」


オレと母の髪を侮辱する女もおらず。



「―――隼人」



代わりに………。


「オレの名は、獄寺隼人と言います」

「そうか。なら、隼人」


オレを、オレの名で呼んでくれる人が。

オレを隼人と呼んでくれる…オレと母の髪を綺麗だと言ってくれる人が。すぐ隣に。


「はい。なんでしょうか"魔法使い"さん」

「実はオレも魔法使いなんて名前じゃない」

「そうなんですか。ではなんてお名前なんですか?」

「…リボーンだ。これからは家族だな。…まぁ、よろしく頼むぞ。隼人」

「はい。こちらこそ…よろしくお願いします。リボーンさん」


そう言ってオレはリボーンさんに微笑み返した。

…オレはこれから、自分が仕えたいと思った人の下で。自分の一番好きなところを認めてくれる人の隣で。日々を過ごす。

これがオレの望む、これからの日常。


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着いてこい。案内してやる。

はいっ