シンデレラ
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鏡の中にはくすんだ灰の色の髪を持つ子供が。

………いや、灰の色の髪ではない。事実これは灰だ。

暖炉の灰を被せられた。こんなに灰が溜まっているから掃除をしろということらしい。

…今のオレはまさしく灰被り。シンデレラというわけだ。どうでもいい。

そんなある日、女が珍しくオレを馬鹿にするわけでもなくこき使うわけでもなく。部屋の中に引き篭もっていた。

数日前からろくに食事も摂ってないし…はて。一体何をしているのやら。

と、思ってたら出てきた。

…部屋着にしては馬鹿みたいに煌びやかで動きにくそうな服を着ていた。


「…シンデレラ!生まれ変わったあたしを見てどう思う!?」

「頭大丈夫かお前」


別に生まれ変わってはないだろ。

と思ったら女に殴られた。


「気の利かないガキね!!こんなときは褒めなさい!!」


…なんだこいつのこのテンション。


「まぁいいわシンデレラ。じゃあこの服をどう思う!?」

「派手」


心の赴くままにそう言ったら、女に思いっきり殴られた。


「そういうことを聞いてんじゃないのよ!!」



女ってなんて自分勝手な生き物なんだ…!!



「まったく、今夜はお城で舞踏会があるのよ!?生半可な覚悟じゃ炎も出せないんだから!!


意味が分からない…!


「…って、ブトウカイ?」


なんだそれ。


「…何?あんた舞踏会も知らないわけ?」


知らねーよ何も知らねーよ勉強出来る金も家にはねーよ悪かったな。

ずっと家で家事をしているだけのオレが世の見聞を知るわけがねーだろうが。外出だって近所に買い物が関の山なんだぞ。


「…ま、あんたには関係ないからいいか…」


よくはない。

いずれはこの家を出る身だ。今のうちから色んなものを見ていた方が、きっといい。


「なぁ」

「何よ」

「オレもそのブトウカイって奴。行ってみたい」

「―――はっ」


オレが珍しく(てか初めて)女にお願いをしたというのに、鼻で笑われてた。


「あんたなんかが行けるわけないでしょ!?身の程というのを考えなさい!!」


身の程ねぇ…


「つか、ブトウカイって何するんだ?」

「踊るのよ。踊って王子様を見初めるの」

「オージサマ?」

「あんたは………ようは金持ちと結婚するのよ!!」


結婚ってお前…


「親父はどうするんだよ」


仮にもアイシテイルんだろう?


「ああ、それ?」


オレの問いに対し女はなんの悪びれもなく、



「やっぱ愛よりもお金よね」



と返した。

そんなお前にはオレの死んだ姉貴がよく言ってた台詞をくれてやろう。


毒にまみれて死んじまえ。