死に行く身体と生き望む心
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急いで車を走らせる。間に合え、間に合えと呟きながら、祈りながら。
一刻も早くあいつの所へと、車を走らせる。
この世界。命なんてそれこそぼろくずのように消えていく。
だから心配なんてするのはお門違いだ。自分の身は自分で守る。それがこの世界で求められる最低限の強さ。
…けれど。
何故だか胸騒ぎがした。日本風に言うのなら虫の知らせという奴だろうか。とにかく不安で――じっとしてられない。
そんなときに聞いた、あいつの話。
…予定時間になっても、連絡の電話を掛けてこないあいつ。アジト潰しの任に出たまま帰ってこないあいつ。
待ってなんかいられなかった。同盟とはいえファミリー違いとかいってはいられなかった。…あいつの所に、行きたかった。
あいつの向かった場所は知っていた。だから車を走らせる。早く早く。一刻も早く。オレをあいつの所へ―――
そうして辿り着いた敵アジトは…潰れていた。物の見事に。
爆発物による破壊。紛れもなくあいつの仕業。…けれど、ならば何故。何故あいつは帰ってこない。連絡をしてこない。
胸がざわつく。考えたくもない可能性。けれど真っ先に行き着く可能性。
それを踏み潰したくて。オレは最早瓦礫と区別の付かなくなっているアジトの中へと入り込んだ。
中に生きてる奴なんていない。ここに有るのは死体だけ。あいつが殺した死体だけ。
奥へ奥へ。亡骸を一つずつ確認していきながら中へ中へ。
そして。最後の通路を通って。最後の部屋を開けて。
…いた。
大きな部屋だった。そこには今まで以上に物言わぬものが転がっていた。
死体死体死体。あらゆる所に、沢山の死体。
―――その。死体の山を掻き分けて。部屋の奥の壁際にあいつはいた。全身血塗れで、生きているのかいないのか。…ここからだと判断できない。
近付く。一歩、また一歩。あいつの生死を確かめる為に。
あと一歩であいつに触れることが出来る…というところで。
「!!」
視えたのは、銀の軌跡。
咄嗟にオレは退いて、無意識に銃を構えて。
「なんだ…跳ね馬かよ」
オレを攻撃してきたのは獄寺本人だった。近付くオレの気配を敵だと思い込んだらしい。
「へ…なんだで片付けられちゃあたまんねぇんねぇぜ、悪童」
オレの軽口にあいつは笑う。その反応を見て、オレも笑う。
暫くそうしていた。他にするべきことには目もくれず。ただ笑っていた。
…それを先に壊したのは、あいつだった。
「―――な、跳ね馬…」
「…なんだ?」
「オレの…上着のポケットに、書類が入ってる。…それ、ボンゴレに届けてくれ」
「お前…キャバッローネのボスを足扱いする気かよ」
「いいだろ…?ボンゴレに役立つことは、同盟であるキャバッローネにも役立つことだ。…頼む」
「…分かったよ。どっちにしろ、お前の頼みなら嫌だとは言えねーしな」
オレが柔らかく微笑みながらそう言うと、獄寺も柔らかく微笑んだ。
「ん…さんきゅ。跳ね馬…」
「頼み事はそれだけか?スモーキン」
オレがそう言うと、獄寺は少しだけ考えて…
「じゃ…あと一つだけ、頼もうかな…」
「…なんだ?」
「オレを…楽に、してくれねぇか?」
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