死に間際
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泣かないで。

泣いてません。

泣かないで。

泣いてませんてば。

どうか、泣かないで。

…泣いてなんか、いません。


…ね。獄寺くん。

―――はい?


お願いだから、泣かないで。

………。


キミはよく頑張った。

………。


キミはよく仕えてくれた。

………。


キミには…よく助けられた。

―――っ


それは誇れることだよ。獄寺くん。


だからどうか。

泣かないで。


…泣いてなんかないって、言ってるじゃないですか。

嘘。だって獄寺くん、悲しそうな顔してる。


それは…

それは?


10代目が泣いてるからですよ…

ああ、これ?それは仕方ないよ。


………。

だってキミとお別れなんだもの。


キミともう、二度と逢えないんだもの。

キミは、死んでしまうんだもの。


―――ごめんなさい。


謝らないで獄寺くん。

こうなるってことは、こうなる日が来ることは理解していたから。

…キミと生涯を共に過ごすって、そう決めた日からずっと。

きっとキミに庇われて、守られて。死に別れる日が来るだろうって理解していたから。


―――ごめんなさい。


謝らないでったら。

謝らせて下さい。


ドジを踏んでしまってごめんなさい。

貴方をこれ以上守れなくてごめんなさい。

貴方を悲しませてごめんなさい。


…死んでしまって…ごめんなさい。


まだ死んでないよ。

死んだら言えなくなります。

それもそうか。

はい。


………。


10代目…

ん?何?

どうして…

うん。


どうして…笑っているのですか?


泣き叫ぶと思った?

…思いました。

あはは。うん。本当はそうしたい。

泣いて、叫んで、嘆いて。


キミに死ぬなって。願いたい。


………。


でも、さ…

はい。

オレがそうしたら。獄寺くん安心していけないでしょ?


………。


獄寺くんが最後に見ていく光景が、オレの悲しんでいる顔なんて。いやでしょ?

…それは…

だから笑ってるの。

…でも、泣いてます。


だから、それは仕方ないよ。

オレ、キミと別れたくなんて、ないもの。

こう見えてもオレ。結構弱いんだ。


―――っ


泣かないで。

泣いてません。

でも。泣きたいんでしょ?


……はい。

泣きたい、です。

貴方と、別れてしまうことが悲しくて。

泣きたい、です。

…でも、オレが泣いたら10代目。悲しむでしょう?


うん。それはもう。

後悔させながら死なせてしまって。それに悲しむね。


はい。だから…

泣いてません。


泣きそうだけどね。

泣きたいですから。

…凄い通じ合ってるねオレたち。

同じぐらい、擦れ違ってますけどね。

あは…そうだね。


―――っゴホ…ッ


…時間、かな…

――10代目…

何?


泣かないで、下さい。

うん。泣くのは今日で最後にするよ。


笑っていて、下さい。

うん。明日からね。


明日から、全部全部完璧にこなして見せるから。

…だから、今だけ。

泣かせてよ。


―――はい。


…じゅうだいめ…

…なに?


―――ごめんなさい。


ごく…

ごめっ…なさ…


………。

―――。


嗚呼、馬鹿だね獄寺くん。

最後の最後まで。オレなんかを気にして。

キミがそんなだから。ほら。


ぽろぽろ。ぽろぽろ。


涙。止まらないよ。


++++++++++

互いに想い合って。互いに悲しみ合って。

そして互いに(キミが貴方がそうだと)理解し合って。