死に別れ
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一歩近付いて、そういえば街を通ったくせに花も何も買ってないことに気付いて。なんだ案外オレも気が動転してたんだなって思って。
とはいえ今から戻るわけにもいかず。それに多分、この人はオレなんかの供え物なんて喜ばないだろうと勝手に推測立てて。まぁ手にこいつもあるしいいだろうと思って。もう一歩進んで。
結局オレは、挨拶だけすることにした。
「リボーンさん」
死したあなたは、もう口を開くことはない。
「獄寺隼人、ただいま帰還いたしました」
死したあなたは、もう二度とオレを見ることもない。
「あなたはドジを踏んだみたいですね」
まさかオレより早く死ぬなんて思いませんでした。
「残念です」
絶対、オレの方が早く死ぬって思っていたのに。
「帰ってきたら、伝えたいことがあったのに」
とはいえ、いざ生きてるあなたを前にしたら結局いつものように言えないんでしょうけど。
「…ねぇ、リボーンさん」
…オレは少しだけ、あなたに近付いて。
「あなたはオレのことなんて、馬鹿な教え子程度にしか思ってなかったんでしょうね」
まるであなたに囁くように。
「でも、オレはそうじゃありませんでした」
ここにはオレしかいないのに、まるで内緒話をするように。
「オレはあなたのこと…ただの一人の先生だなんて。思えなかった」
言おうとして、言えないってのをずっとずっと続けてきたけど。
「オレは、あなたのこと。好きでした」
あなたが死んだからこそ言えるだなんて、それはなんて意味がなくて臆病な行為。
「今更ですよね」
最後にオレは、あなたの部屋から持ってきた、あなたの帽子を添えて。
「…おやすみなさい、リボーンさん」
そう言って、オレはその場を後にした。
……今日はとてもいい天気で。
こんな日をあなたと歩けなかったことが、とても残念だった。
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あなたはオレを、どう思っていましたか?
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