白雪姫
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どれだけ歩いただろうか。
今まで動かず、また動くことを許されなかった獄寺に体力などあるはずもない。
獄寺の息はすぐに切れたが、それでも足を止めることはなかった。
少しでも遠く。
あの城から遠く。
もし、見つかったら。
連れ帰されたら。その先は。
獄寺は身を震わせ、更に足を進めた。
次第に夜も深け、冬の寒さが獄寺を襲う。
気力だけで歩いていた獄寺の身体にも限界が訪れていた。
このまま倒れてしまえば寒さに凍え死ぬか、森の動物に食べられてしまうかも知れないが。
むしろ、それを望んでさえいたような気もする。
僅か14年しか生きてなかったが、獄寺は生きるということに疲れ果てていた。
自分が生きる価値さえないように思えた。
あるとしても、物としての価値。
人として生きていけぬ人生など何の意味があるのかと。
ならば死のうと。
とはいえ、城で死ぬことなど出来ないだろうから外で。
過保護に大事に育てられた身体で死ぬ術さえ知らぬ獄寺は大自然に全てを委ねようとした。
寒さで動けなくなって餓死するもよし。
倒れて落ちて、死に絶えるもよし。
それこそ森の獣に食べられて死んでも。それはそれでいいと。
死ぬことが怖くないのかと問われれば、素直に話せば実は怖いのだけれど。
だけど。
生きる方法が、あの城の中にしかないのなら。
それが嫌なら、死しかないのなら。
ならば獄寺は、死を選ぶ。
木の幹に寄り掛かり、獄寺は静かに目を閉じる。
疲れていたせいか、緊張の糸が解けたのか…獄寺の意識はすぐに沈んだ。
もう目が覚めることはないのだろうな、と思いながら。
けれど。
「……………ん?」
そうは、ならなかった。
「…人が落ちてる?」
獄寺が意識を失ったすぐあとに、偶然にもある人物が通りかかったから。
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