白雪姫
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「ん……」


ゆっくりと意識が覚醒するのを感じながら獄寺は目を開いた。

日の光の眩しさに目を細めつつも、見えたのは木で出来た天井。


「…?」


身を起こすと、それまで自身を包んでいた毛布が崩れ落ちた。


「ここは……」


呟いて思い出されるのは、目が覚める前のこと。

城から抜け出て、森の奥に入ったこと。

そこまで思い出して、一気に意識が覚醒した。


ここはどこだ!?


もう目覚めないと思っていた。

あそこで死ぬのだと思っていた。


なのに…


ここは俗に言う、天国と呼ばれるところなのか?

それならばいいのだが、恐らくそうではない。

獄寺の身体が震える。

誰かが自分を拾ったのだ。

物である自分を。

と、


「起きたのか?」


声が聞こえた。

思わず獄寺の身体が竦む。

けれど意外だったのは、その声は想像していた厳つい男のものではなく…若い…というか幼い………子供の声であったということ。


「え…?」


恐る恐る獄寺が声がした方に顔を向けるも…何故か誰も見当たらない。


「…?」

「おい」


姿は見えずが声は聞こえる。

一種の軽い現実逃避だろうか?と獄寺はうっすらと考える。本当は怖い人が目の前にいるのだけれど自分が怖さのあまりに見えないふりをして―――


「おい!」

「うわ!?」


などと思っていたら、すぐ横から声がした。

見れば、やっとその姿を確認することが出来た。

何故かスーツに身を包み込んだ小人。


「大丈夫か?」

「あ、ええ……はい」


しどろもどろに、獄寺が答える。

けれどそんな獄寺の心境など露知らず、小人は微笑んだ。


「よかった」

「え?」

「死んだように眠っていたから、もう起きないんじゃないのかって、心配した」

「……………」

「ん?どうした?」

「え!?い、いいえ!!なんでもないです!!」


獄寺はどもりながらも答えた。

と、


「ん?そいつ起きたのか?」


更に新しい声が聞こえた。


「ああ、おはようコロネロ。そうだぞ。やっと起きたんだ」


小人は嬉しそうに、弾むような声で報告する。その言葉にコロネロと呼ばれた小人も少し嬉しそうに「よかったな」と返した。


「そうだ。お前の名前は?オレはリボーンって言うんだが」

「あ…オレは…オレは獄寺です。獄寺、隼人……」

「そうか、獄寺か」


リボーンはやっぱり笑って、


「よろしくな、獄寺」


と天使の笑顔を獄寺に返した。