白雪姫
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「で、キミは一体何者なの?」


それから数十分後。

獄寺は大きなテーブルのある部屋まで連れられて、小人に囲まれていた。

獄寺に何者と問い掛けているのは、全身にローブを包んだマーモンと名乗る小人。

どちらかと言うとそっちが何者…?という気がしないでもなかったが、自分は自分で城から逃げてきた身分なのでなんとも言えなかった。


「こんな人里離れた森の奥に普通の人間が来るわけがない。事情は分からないけど、厄介事はごめんだよ」

「……………分かった。すぐに出て行く。…迷惑は……掛けない」

「ふん。"彼女"に手を煩わせただけでも充分にこっちは迷惑してるんだけどね。慰謝料でもほしいぐらいだよ。キミが着ている服も綺麗なら高く売れそうだけど、ぼろぼろだしね」

「……………」


獄寺は気不味そうにしながら、席を立つ。

何人かの小人がマーモンを咎めるかのような、獄寺を引きとめるような目線を寄越したが…結局何も言わず。

そして獄寺が、そのまま出口まで歩き出そうとした…その時。


「おい、飯の支度が出来たぞ」

「今日は8人分だから、作り甲斐があったぜコラ」


食事当番で席を外していたエプロン姿のリボーンとコロネロがみんなを呼びに来ました。

と、リボーンが出口に立っている獄寺を見つけました。


「…?獄寺?どっか行くのか?」

「…はい。これ以上あなたたちに迷惑を掛けるわけには…いきませんから」

「迷惑?」


リボーンはきょとんとした顔を作りました。


「何で獄寺がここにいるのが迷惑なんだ?誰かが言ったのか?」

「えっと…」


獄寺はちらりとマーモンの方を見遣ろうとして、


「はははここにいる子の誰がキミが連れてきた人を追いだそうだなんて言うんだい?全てはこの人が独断で決めたことに決まってるよ!!」


とマーモンがリボーンに言ってるのを見て、


「…はい。見ず知らずの他人であるオレを拾ってくれたことには感謝しますが…いつまでもそれに甘んじるわけにはいきません」

「殊勝な心懸けだね」

「ですので…」

「お前がここにいるの、全然迷惑じゃねーぞ?」

「でも…」

「お前がここが嫌で出て行きたいって言うのなら止めねーけどな。だけど、そうじゃないのなら…むしろずっとここにいてほしい。これはオレのわがままだけどな」

「………」


投げられる、暖かい言葉。

知らず、獄寺は涙を流していました。


「ど、どうしたんだ?どこか痛むのか?」

「いえ……なんでもない、です…」


ただ、嬉しいだけ。

物ではなく、人として見てもらえてる。

自分の外見以上に、この人は、この人たちは自分の内面を見てくれている。


それがよく分かる。


何故なら、あの視線がないから。

生まれてからずっと、晒され続けてきたあの視線を感じないから。

それの、なんと心地良いことか。


「…オレは…ここにいても、いいんですか?」

「ん?当たり前じゃねーか」

「でしたら、出来れば、ずっといさせてください……あなたの傍に」

「ああ。分かった」


リボーンはあっさりと了承して、獄寺は嬉し涙を零した。

ついでにマーモンはちょっとつまらなそうに舌打ちをしていた。


「…話も纏まったところで…ひとまず飯にしようぜ。せっかく作ったのに冷めちまう」


話の流れを傍観していたコロネロがそう言って、少し遅めの朝食が始まった。