死せる彼と生ける彼
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そこで目が覚めた。

朝だった。

試しにアジトに出てみた。

周りはいつも通りだった。

そこで初めて、先程の一件は夢だと分かった。

余りにもリアルな夢だった。


けど、それだけだった。


彼にとってはなんの関心もないこと。

彼はその日の業務を普通にこなして、また眠りについた。


そしてまた夢を見る。


同じ夢。

あの日の夢。

彼が死ぬ夢。

繰り返し。

繰り返し。

見続ける。

何度も。

何度も。

見続ける。

周りはもう葬儀を上げない。

嘆かない。

悲しまない。

それとは関係なく彼はいくども彼の夢に現れ、死んでいく。

頭を弾けさせる。


ある日、彼はいつものようにいつもの夢を見ていた。

何度も繰り返し見た映像が眼前に広がる。

そのとき、彼は気紛れを起こした。

彼を助けてみようかと。

弾丸が来る前に彼をはじき飛ばせばいいだけだ。自分にも当たらない。

彼にとって、彼の死は心底どうでもいいことだった。

だが、いい加減見飽きた。

他の道も見たくなった。

弾丸が撃たれる。

彼が仲間を突き飛ばす。

その彼をはじき飛ばそうとしたそのとき。



「無駄だ」



彼の声が聞こえた。

顔は見えないが、何故か笑っているのだろうと分かった。



「ここは舞台。そっちは客席」



彼は言葉を続ける。

眼前には飛んでくる弾丸。

それが自分の頭を吹き飛ばすのだというのに、彼は何ら恐れずに言葉を続ける。



「干渉は出来ねぇよ」



ククッと、彼は笑いを零す。

その間にも弾丸が彼の元へと。

彼の顔は見えない。彼の顔は弾丸の方を向いている。

彼は動けず、ただただその様子を眺めるだけとなった。


そして。

弾丸が。

いつものように。

彼の顔を―――


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そして世界は朝へ。やがて世界は夢へ。